工場の煙突や配管の先から、もやもやしたものが立ち上がっていませんか?
白い蒸気の正体は蒸気漏れではなくフラッシュ蒸気かもしれません。フラッシュ蒸気についてはこちらの記事をご覧ください。
今回は実際にフラッシュ蒸気を回収したCaseStudyを2つご紹介します。
製紙会社におけるフラッシュ蒸気の回収
きっかけ
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ご提案
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◆ドレンタンクの大気開放管から放出されるフラッシュ蒸気が気になっていた。
◆燃料費の高騰により省エネできる方法を模索していた。
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生産の安定性を測りながら同時にフラッシュ蒸気を回収し、熱エネルギーの削減できるユニットを工事費も削減できるパッケージでご提案しました。
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お客様のコメント
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大気開放管から放出されるフラッシュ蒸気が1/3程度になりました。約1年でペイアウトできるのでありがたいです。
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食品会社におけるフラッシュ蒸気の回収
きっかけ
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ご提案
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◆ボイラ給水タンクからの蒸気漏れが気になっていた。
◆製品と接した蒸気のドレンを有効使用できないか。
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給水タンクからのフラッシュ蒸気はプロセスに再利用しました。また、製品と接したドレンは廃熱回収システムを可能な限り工事も簡単なパッケージでご提案しました。
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お客様のコメント
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燃料費が4%削減できている。試算頂いた通りの結果でとても満足しています。
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フラッシュタンク
フラッシュタンクにつきましたはこちらをご覧ください。詳細はこちらよりお問い合わせください。
無圧の廃蒸気、無圧フラッシュ蒸気の回収につきましてはこちらにて解説しております。
蒸気システムにおいてドレン回収は大きな省エネ要素です。ドレンからでるフラッシュ蒸気を回収することができれば更なる省エネにつながります。
お問い合わせは上部『お問い合わせ』よりお願いいたします。
蒸気に関するWebマガジン No.89
※こちらの記事はスチームトラップマネジメント第2回です。第1回はこちらからご覧ください。
スチームトラップがドレンを排出するのに重要なことは分かったと思います。しかしスチームトラップはスチームトラップに到達したドレンしか排出できません、なのでドレンが発生してからしっかりとスチームトラップに到達するように配管を設計してあげることが非常に大切です。トラップはある程度なにを使っても許容できる場合がありますが、スチームトラップまでの道のりは確実にしておかないとドレン排出はできません。
スチームトラップの排出後
ドレンがスチームトラップを出た後はどうなるかご存じですか?圧力次第ではありますがドレンの一部は蒸気になります。この蒸気をフラッシュ蒸気と呼ぶのですが質量では一部でも体積とすると90%以上が蒸気になります。そのためドレン配管は水配管ではなく蒸気配管として設計する必要があります。また既存のドレン主管につなぐ場合には満水の可能性もありますのでウォータハンマ―の可能性もあります。少しでもリスクを低減するためにディフューザを設置し影響を少なくしましょう。
省エネトラップはどのトラップ?
省エネトラップという言葉を時々聞くことはありませんか?厳密にいうと多少の省エネ性はあるのですがここでの答えは省エネトラップは存在しません。なぜならスチームトラップはドレンを排出するだけです。『ドレンをつくることはしない』=『エネルギーを浪費しない』のでそもそも省エネ性を考えるのは難しいですね。細かな省エネ性に関してはDr Steamの『スチームトラップとして必要な機能』をご覧ください。
ちなみにオリフィストラップやラビリンストラップという種類のトラップがあります。これらは全閉ができないタイプのトラップです。(ISOではトラップには定義されない)これらは常に一定負荷を条件に選定しますので条件によっては蒸気を漏らすことを前提に設計します。なので省エネとは真逆と立ち位置にいるトラップです。もともとメンテナンスができない船で故障しないことを優先として設計されて使用されていたトラップですね。
トラップマネジメントの省エネルギー
省エネトラップは基本的に存在しないといいましたが、トラップマネジメントでは省エネができます。トラップが正常稼働時にはトラップは蒸気を漏らしませんが、故障時は蒸気を漏らします。なのでいかに故障したスチームトラップを早く修理するかがトラップマネジメントの課題です。その上でポイントは2つです。
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❶ 故障の早期発見
定期的なトラップ点検やトラップ故障の自動検知(STAPS)等でなるべく早く発見する。
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❷トラップ交換の早期実施
スチームトラップステーションでは配管の取り外しをする必要がないため5分程度でのトラップ交換が可能です。また遮断弁を二重にしブローダウンバルブを設置することによって、蒸気通気中の交換が可能になるため定期修繕のタイミングまでの蒸気ロスを防ぐことができます。
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第3回はスチームトラップの見直しによる制御弁の故障解消のケーススタディをご紹介します!
ジョイントラシリーズ対応の多機能ディスクトラップ新登場!
・2MPaラインで安定した稼働を実現
・組み合わせ12種類
・ジョイントラシリーズ初の空気障害対応オプション
・このようなお客様にお勧め!
スパイラックス・サーコのジョイントラシリーズ
製品の詳細
UTD26型ディスク式スチームトラップの技術仕様書はこちらから閲覧、ダウンロードが可能です。
取扱説明書はこちらから。
蒸気に関するWebマガジン No.55
温水をつくる-貯湯槽編- 第2回
温水は非常に身近な熱媒体です。工業はもちろんのこと、ホテル、病院や商業施設といった一般施設においてもよく利用されます。蒸気の熱の利用先として最も使われることが多い用途は温水をつくることではないでしょうか。温水をつくる方法はいろいろありますが、その中でも今回は最も基本的な蒸気で加熱する貯湯槽について考えていきたいと思います。
貯湯槽の目的は他の給湯設備と同じく第一に温度を安定させることが目的になります。その上で、一定量の保有水量があるので瞬間的な負荷に対しての対応に優れています。実際に設計してみましょう。せっかくなので、実際に数字を当てはめて考えてみましょう。
前回の温水をつくる-貯湯槽編-第1回では、『①貯湯槽の容量』、『②熱負荷と追従性』について解説しました。
③温度ムラとレジオネラ菌対策
貯湯槽内の温度はどうしても、上と下で、あるいは熱交換器から近い場所と遠い箇所とでは温度差が出てしまいます。温度管理を一点で行っている場合、供給している温度が数値通りになっているかはわかりません。その場合には60℃以下で滞留している水が発生する可能性があります。レジオネラ菌は20-45℃の範囲、特に38℃前後で最も繁殖しやすい温度環境になります。貯湯槽ではこういった温度ムラをタンク内に作らないことが重要になります。過大選定された貯湯槽では、温度ムラが発生しやすくレジオネラ菌増殖のリスクが増大します。必要以上に大きな貯湯槽を設置するのは避けましょう。温度ムラをなくすためには循環ポンプを設置することも推奨されます。滞留しやすい、熱交換器から一番遠い管底部等に循環ラインを作ることによって、温度ムラを解消しましょう。また、複数のポイントで温度計測をすることによって、安全管理の見える化もいいでしょう。
レジオネラ菌についてはこちらのページでビデオをご覧いただけます。
④ドレン滞留と熱交換器のパンク
100℃以下の流体を加熱した場合に、蒸気圧力が大気圧より下がり負圧になることがあります。この場合に、スチームトラップの二次側より一次側の圧力が下がった場合に、発生したドレンはスチームトラップから排出されることができません。この現象をストールと呼びます。このストールは熱交換器内のウォータハンマ―を引き起こし、加熱コイルの水位レベルでパンクを引き起こす原因になります。また、蒸気の制御弁のハンチング等を起こす原因にもなります。プレッシャーポンプと呼ばれるポンプをスチームトラップの代わりに設置することによって、強制的にドレン排出を行うことができますので、80℃未満の加熱で特に設計より負荷が下がることが予想される場合には、プレッシャーポンプを設置しましょう。
⑤緊急時の貯湯槽の役割
震災等の緊急時に温水を貯めていると安心ということをよく聞きます。では、実際に貯湯槽が緊急時にどのように役立つかを考えてみましょう。
ガスの供給がなくなった場合、ボイラが停止し貯湯槽の加熱ができなくなりますが貯湯しているお湯を供給することができます。ただし、お湯を本来の温度で供給できるのははじめだけで使うにつれて補給水が入ることによって、温度が下がっていきます。仮に1時間の貯湯量があっても、お湯の供給ができるのは、1時間未満となります。
電気の供給がなくなった場合、この場合はボイラ、及び供給するポンプ自体が停止していることになりますので、使用すれば、給湯システム全体の圧力がすぐに下がり、供給自体ができないと考えていいでしょう。
水の供給がなくなった場合、この場合には、ポンプ、ボイラ共に稼働し続けることが短時間可能になります。この短時間は受水槽の水の容量で決まってきます。
緊急時の温水利用という点においては、限定的な条件でのみ貯湯槽が役立ちます。緊急時の温水供給が必要なのであれば、それぞれのユーティリティの代替を検討する方が確実です。ガス供給であれば、油炊きのボイラ、電気であれば自家発電、水であれば、井戸や、十分な量の貯水等が検討できるでしょう。緊急時の対応に関しては、実際に使用したい条件を想定してシステムを構築しましょう。
熱力学の公式はこちらでご確認ください。
温水をつくる‐貯湯槽編‐いかがでしたでしょうか。実際に貯湯槽を更新する際に専門家が必要だと感じましたら、ぜひスパイラックス・サーコにお問い合わせください。
温水製造におけるバッチ式と連続式の違いについての記事を公開いたしました。こちらもぜひお読みください。
こちらの記事の対となる『温水をつくる‐瞬間給湯編』を公開いたしました。合わせてご覧ください。
次回は『ドレン回収をあきらめていませんか?』です。ぜひご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.53
スチームマネジメント
ボイラーから発生した蒸気は、乾き度維持、圧力制御、流量計測、トラップ管理、ドレン管理等、様々なマネージメントが要求されます。
各箇所における、適切な「スチーム・マネージメント」の実施は、お客様のシステムの生産性向上、効率・環境の改善、コストダウンと共に、それらを高い基準で維持する事に繋がります。
これらは『スチーム・マネージメント』の代表例であり、ほかにも多くの項目がありますが、それらすべてをお客様で実践することは大変です!
蒸気のことは、すべてスパイラックス・サーコに任せてください。当社はお客様の持続可能な成長のために、貢献させていただきます。
次回は『温水をつくるー貯湯槽編 第1回』です。
蒸気に関するWebマガジン No.51
蒸気配管の中ってどうなっていると思いますか?
蒸気配管ですから、"蒸気だけが流れている"と思われる方も多いのではないでしょうか?
"蒸気だけが流れている"というのは非常に理想的なのですが、現実ではなかなかそうはいきません。
今回は、蒸気配管の中をのぞきながら、それぞれの流体・物質に対して、適切な解決策を探ってみましょう。
蒸気
言うまでもありません。でも実は蒸気には「乾き度」と言うものがあります。ひとくちに"蒸気"といっても、配管に流れている蒸気は同じではありません。過熱蒸気なのか飽和蒸気なのかをはじめ、「温度」「圧力」「乾き度」「流速」等いろいろな要素があります。
蒸気を加熱目的で利用するためには、これらの要素が使用するポイントで安定していることが大切です。
ドレン
蒸気発生時点での浮遊する水であったり放熱等で蒸気が水に凝縮してしまったものを「ドレン」や「凝縮水」と呼びます。過熱蒸気でない限りはボイラーでの蒸気発生時点でも100% 乾き度の蒸気というのは、まずありえません。そのためドレンは蒸気配管には少なからず存在します。
そしてこのドレンが「蒸気は難しい」といわれる代表的な原因といえるでしょう。
ドレンによる「浸食」や「ウォーターハンマー」は蒸気の設備の運営において、保守や安全性に大きく影響を与えます。ドレンの適切な除去は蒸気エンジニアリングにおける大きな一つのテーマといえます。
空気
空気を代表する非圧縮性ガスと呼ばれる気体は非常に優秀な断熱材です。
ただし、加熱を行う上では加熱時間、温度の安定やムラや配管の腐食等、蒸気配管にとってのメリットはないといえるでしょう。24 時間運転の工場ならともかく、毎日や週末に蒸気設備を停止する工場では、フランジの隙間などからの空気の混入を防ぐのは困難です。
異物
錆、スケールや金属くずといった固形物は配管を施工するうえで排除しきるのは困難でしょう。ストレーナを詰まらせることにより圧力が低くなってしまったり、制御機器にかみ込んでしまうことによって機器の故障につながります。
今回の関連事項を少しだけまとめました。
如何でしたか?蒸気配管の中身は、一様な蒸気だけではありません。配管方法や適切な機器を設置して、配管の環境を整えることで、問題解決につながります。詳しくはお近くのスパイラックス・サーコのエンジニアまでご相談ください。
次回は『スチームオペレーション』です。
蒸気に関するWebマガジン No.50
普段は"蒸気"という言葉でひとくくりにされていますが、"過熱蒸気"と"飽和蒸気"という2種類の蒸気があることはご存知ですか? 2つの蒸気は特性の違いから、発電設備等では"過熱蒸気"が、熱利用する施設では"飽和蒸気"が多く利用されています。
排熱ボイラーや発電設備で副次的に生成された過熱蒸気は加熱媒体としては飽和蒸気に劣りますが、幾つかのメリットがあります。
過熱蒸気から飽和蒸気に
過熱蒸気から飽和蒸気に調整するシステムを 減温システム といいます。
過熱蒸気は飽和蒸気より更に熱エネルギーを保有している蒸気です。そのため、過熱蒸気に水を混ぜることにより、飽和蒸気へと調整することができるのです。
ただし、蒸気の理想配管では蒸気(気体)とドレン(液体)が同時に存在することを嫌います。ですので、飽和蒸気より少し過熱されている程度の過熱蒸気へと調整します。
こうすることによって、熱利用設備で利用しやすい飽和蒸気に調整され、熱利用が可能になります。
クリックで拡大します。
過熱蒸気と飽和蒸気の使い分け
過熱蒸気と飽和蒸気はそれぞれメリット・デメリットが存在します。
また、過熱蒸気は動力や移送に、飽和蒸気は熱利用に――各工場での最適な使い方は異なりますので、工場の生産、安全、保守、省エネ等を考慮したうえで、最適な蒸気システムを組むことが大切です。
スパイラックス・サーコでは過熱蒸気に低圧蒸気を混ぜて中圧蒸気にする減温器をご用意しております。
製品詳細はこちらから。
次回は『蒸気配管の内部を見てみよう』です。ぜひご覧ください。
First for steam solutions
スパイラックス・サーコのスチームソリューション
ホームページはこちらをご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.23
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途にてきした最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から
『7.ストール』について解説します。
◆ストールとは
ストールについては、『ストールとは』で詳しく解説しています。
スチームトラップは、トラップ入口側の蒸気圧やヘッド差などの要素で動きます。出口圧力が入口圧力よりも低くなければ、正しい方向の流れを確保できません。すなわち、スチームトラップを通る流れの速度は、その差圧に関係があります。
熱交換器からのドレン排出時には、負圧による差圧も起こりえます。これにより熱交換器内ではドレンの流れが減少、停止してしまいます。
◆ストールが起こるとどうなる?
・製品に焼きムラ、加熱不足
・ウォーターハンマー
・熱交換器が凍結でパンク
・制御弁がハンチング
・機器の寿命が短い
・熱交換器のガスケット漏れ
・配管腐食 等
これらの症状は全て、ストールが原因かもしれません。
◆スムーズにドレンを排出するには
プレッシャーポンプの設置を推奨します。プレッシャーポンプは均圧管によって熱交換器と常に同圧になり、熱交換器が負圧になってもドレンは自重で排出されます。ドレンが一定量ポンプに溜まると、駆動蒸気がポンプ内に入り込み、蒸気圧力によってドレンが圧送されます。これによってストールが解消されます。
スパイラックス・サーコのプレッシャーポンプの詳細につきましてはこちらをご覧ください。
次回は『制御のお話し』です。
前回の『06.真空排出』はこちらから
蒸気に関するWebマガジン No.21
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途に適した最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から『6.真空排出』について解説します。
◆真空時のドレン排出には、プレッシャーポンプが有効
真空下で動作している蒸気管からのドレン除去は難しい場合が多いと思います。スチームトラップを使用する場合は、オリフィス両端に一定の差圧を確保してドレンを放出するため、蒸気管内ではなく、より大きな真空源に出口を接続しなければなりません。このような接続が行なえない場合には、圧力駆動式のポンプを用いてプラントからドレンを排出することができます。
立ち上がりがほとんど、あるいは全く存在しないポンプ出口には、ソフトシートの逆止弁を推奨します。また、ポンプよりも下の箇所に排出する場合には、エアブレーキがアンチサイフォン装置として機能します。ポンプより下に排出する場合は大気圧を駆動力として使用することができますが(右図)、ポンプよりも下のループシールに出口用の逆止弁を配置させることにより、(逆止弁の種類に応じた)最小限の開放水頭とウォーターシール確保しなければなりません。
真空のガスシステムからドレンを排出するポンプの場合には、圧縮空気や不活性ガスを駆動力として用いることにより、ポンプを駆動することができます。
スパイラックス・サーコのプレッシャーポンプの詳細はこちらからご覧ください。
次回は『7.ストール』について解説します。
前回の『5.ディフューザー』はこちらから
蒸気に関するWebマガジン No.20
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途に適した最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から
『5.ディフューザー』について解説します。
◆危険性の回避および騒音予防
管末端から解放で大気中にドレンを排出するスチームトラップでは、高温のドレンの排出を視覚的に確認することができます。トラップの前にはドレン圧力と相対的に一定量のフラッシュ蒸気が存在します。これは通行者にとって危険源になる可能性があります。
放出の激しさを軽減することで危険を最小限にすることができます。配管の末端にシンプルなディフューザーを設置すれば、排出の激しさと、騒音を軽減することができます。一般的には騒音レベルを最高で80%を低減できます。
スパイラックス・サーコのディフューザーの詳細はこちらからごらんください。
次回は『6.真空排出』について解説します。
前回の『4.グループトラッピング』はこちら
蒸気に関するWebマガジン No.19
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途にてきした最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から
『4.グループトラッピング』について解説します。
◆グループトラッピングとは
グループトラッピングとは、1台のトラップで一つ以上のアプリケーションに機能させることです。下の二つの異なる蒸気圧で動作する2つのバッチプロセス(ジャケット釜)のイラストをご覧ください。この例では、それぞれのプロセスからのドレンラインが一つのスチームトラップに接続されています。ジャケット釜Bでは圧力が高く、この容器のドレンは排出されるが、逆止弁Cが閉じたままになるため、ジャケット釜Aからのドレン排出が抑制されます。ジャケット釜Aのラインでは、ドレンが滞留し、性能が著しく低下してしまいます。
このような例から、異なる圧力で動作する機器のグループトラッピングは適正な方法とは言えません。では、機器の動作圧力が同じ場合はどうなるでしょう。
上のイラストをご覧ください。ジャケット釜Aの内容物はほぼ動作温度に達しており、蒸気はほとんど凝縮していません。一方ジャケット釜B,C,Dは低温の製品を充填したばかりであり、蒸気を流すと凝縮率がジャケット釜Aよりはるかに高くなります。結果的に、これらの供給管では蒸気の速度がかなり上昇し、それぞれの分岐ラインに沿って大きな圧力降下がおきます。(B,C,DではAよりも凝縮率が高いことから)ジャケット釜B,C,Dの入口やそれぞれの蒸気ジャケット内では蒸気の圧力がより低いため、加熱能力が低下し、生産時間が長くなってしまうことがあります。
このようなことから、ジャケット釜B,C,Dでは排出口の圧力もジャケット釜Aより低くなります。ジャケット釜Aから排出されたドレンは圧力を平準化しようとして、他のジャケット釜から出たドレンと逆流することになります。異なる圧力における異なる容器の排出ポイントを一つのトラップに接続すると、最も圧力の高い容器(この場合A)が他の容器からの流れを阻害してしまいます。すなわち、最もドレンを排出しなければならない容器(B,C,D)のドレンが滞留しやすくなってしまいます。したがって上図の配置は適正なものとは言えないことになります。グループトラッピングしたプロセスに個々に温度制御が装備されていると、状況はさらに悪化する可能性があります。
◆なぜグループトラッピングをしているの?
以前はスチームトラップの種類が少なかったため、またかなり大型で値段も高かったため、グループトラッピングを行っていました。現在は、スチームトラップは小型化し、費用対効果も高くなりました。グループ単位で行うよりも、個々の装置毎にトラップを設置することが望ましいと言えます。
次回は『5.ディフューザー』について解説します。
前回の『3.蒸気障害』はこちらから。
蒸気に関するWebマガジン No.9
スチームトラップは温調式、機械式、熱力学式の3つに分けられます。
今回はこの中の熱力学式スチームトラップの動作、メリット/デメリットについて解説します。
◆熱力学式スチームトラップ
熱力学式スチームトラップは、トラップを通過する際のフラッシュ蒸気の動的効果によって動作します。
熱力学式スチームトラップには4種類あります。
-ディスク式
-インパルス式
-ラビリンス式
-固定オリフィス式
この中からディスク式スチームトラップについてのみ、解説します。
◆ディスク式
ディスク式の構造は非常に単純で、可動部品はキャップ内部の平面上にあるディスクのみです。始動時に流入する圧力によってディスクが上昇すると、低温のドレンと空気がディスク下部に内部リングに流れ、出口から排出されます。ドレンの温度が次第に上昇すると、トラップ入口を通る時に蒸気が発生する。このフラッシュ蒸気はドレンよりも容積が大きいため、流速が早くなります。ベルヌーイの定理*1に従い、高速の蒸気によってディスクは弁座に引き寄せられます。
メリット
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デメリット
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動作範囲全体で動作が可能。
(内部部品交換/調整なしに)
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非常に低い差圧では動作が確実ではない。
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小型で軽量。
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空気障害を発生することがある。*2
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高圧や過熱蒸気に使用可能。
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排出音が大きいことがある。
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ウォーターハンマーや振動による影響を受けづらい。
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ディスクの摩耗のおそれがある。
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サイズに比べドレン排出量が大きい。
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凍結による破損の可能性が少ない。
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*1:ベルヌーイの定理:動いている流体においては、全ての点における総圧力は同じである、ということを述べています。その総圧力は流体の静的圧力と動的圧力の合計です。静的圧力は圧力計で測定されたもの、動的圧力は流体の個々の粒子が障害物に衝突して停止させられるときに、それらの粒子が作り出す圧力です。動的圧力は粒子の速度が速くなるほど高くなります。
*2:流入圧力がゆっくりと形成されれば、始動時に大量の空気を排出されるが、急激に圧力が形成されると、高速の空気が蒸気と同様にディスクを閉じてしまい空気障害が発生することがあります。
温調式スチームトラップ、機械式スチームトラップについては、各ページをご覧ください。
スチームトラップの選定についてはこちらのページで解説しております。
次回は『流量計測』について解説します。
蒸気に関するWebマガジン No.8
スチームトラップは温調式、機械式、熱力学式の3つに分けられます。
今回はこの中の機械式スチームトラップの動作、メリット/デメリットについて解説します。
◆機械式スチームトラップ
機械式スチームトラップは、蒸気とドレンの密度差を感知することで動作します。
機械式スチームトラップには2種類あります。
-ボールフロート式
-逆バケット式
◆ボールフロート式
ボールフロート式では、ドレンが存在するとボールが上がり、バルブが開いて高密度のドレンを通過させます。古いタイプのボールフロート式では、手動式の空気抜きが行われていたが、現代のトラップでは温調式のエアベントが使用され、初期空気を通過させながら、トラップでドレン排出にも対応することができます。
メリット
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デメリット
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蒸気温度のドレンを連続排出できる。
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凍結による破損の可能性がある。
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大小のドレン負荷にも等しく対応することができ、広範囲にわたる急激な圧力や流量変動に影響されない。
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多様な圧力範囲で動作させるためには、異なる内部部品が必要となる。高差圧で動作させる場合、オリフィスを小さくしフロートの浮力とのバランスを維持する必要がある。
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口径に比べて大容量。
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ウォーターハンマーへの耐性が高い。
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空気障害解消装置付きが選べる。
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◆逆バケット式
逆バケット式は、蒸気がトラップに到達すると、さかさまになったバケットが浮き上がり上昇して、バルブを閉じます。バケットの上部にはベント穴が開いており、これは蒸気と空気を排出させる上で必要不可欠です。
メリット
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デメリット
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高圧に耐えられる。
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バケット最上部の穴径が小さいため、空気を極めて緩慢にしか排出できない。
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ウォーターハンマーへの耐性が高い。
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凍結による破損の可能性がある。
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入口に逆止弁を追加すれば過熱蒸気ラインにも使用可能。
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圧力変動が予想されるラインには逆止弁が必要。
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故障時には通常開。従って例えばタービンからの排出など、この機能を必要とする用途に置いては安全性の向上となる。
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バケット下部に水封が必要。水封が失われると無駄に蒸気が排出されてしまう可能性がある。
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スチームトラップの種類、機械式はいかがでしょうか。下記のページで温調式と熱力学式について説明しています。ぜひこちらもご覧ください。
スチームトラップの種類 温調式(バランスプレッシャー式、バイメタル式)
スチームトラップの種類 熱力学式(ディスク式など)
蒸気に関するWebマガジン No.7
スチームトラップは温調式、機械式、熱力学式の3つに分けられます。
今回はこの中の温調式スチームトラップの動作、メリット/デメリットについて解説します。
◆温調式スチームトラップ
温調式スチームトラップは流体の温度変化によって動作します。
飽和蒸気の温度は圧力によって決まります。蒸気スペースでは、蒸気が蒸発エンタルピー(熱)を排出することにより、蒸気温度のドレンが形成されます。さらに熱が失われることによって、結果的にドレンの温度が下がります。このタイプのスチームトラップは、この温度低下を感知してドレンを通過させます。蒸気がトラップに到達すると、温度が上がりトラップが閉まります。
温調式スチームトラップには3種類あります。
-液体膨張式
-バランスプレッシャー式
-バイメタル式
◆液体膨張式
これはもっとも単純な温調式トラップの一種です。加熱された油入エレメントが膨張し、ドレンの流出をストップします。
メリット
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デメリット
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低温で排出できる。
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100℃以下のドレンを排出するので、蒸気スペースからの迅速な排出はできない。
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始動時に完全開弁し、空気を排出し、最大のドレン排出容量を確保できる。
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通常は並列作動する別のトラップを必要とする。通常、単独では使用しない。
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振動・ウォーターハンマーなどに耐性あり。
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凍結条件にさらされる場合には、保温が必要。
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◆バランスプレッシャー式
このトラップは、液体膨張式に大幅な改善を加えたものです。沸点が水より低くなるように特殊な液体と水の混合物を入れたカプセルが周りの蒸気圧によって作動します。
メリット
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デメリット
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小さく軽量で、サイズの割に容量が大きい。
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腐食性ドレンやウォーターハンマーによる破損に弱い傾向がある。(ベローズが内蔵されているトラップのみ)
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始動時に完全開弁し、空気を排出し、最大のドレン排出容量を確保できる。
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飽和温度以下まで下がらないと開弁しないため、蒸気スペースからの迅速な排出はできない。
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トラップのメンテナンスが容易。
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凍結の心配が少ない。
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-
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◆バイメタル式
2枚の異種金属片を一つのエレメントに溶接したバイメタル式エレメントが温度に反応してドレンの流出をストップします。
メリット
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デメリット
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小型であるが大容量に対応可能。
広い範囲の蒸気圧で動作するため、オリフィスのサイズを変える必要がない。
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100℃以下のドレンを排出するので、蒸気スペースからの迅速な排出はできない。
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始動時に完全開弁し、空気を排出し、最大のドレン排出容量を確保できる。
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エレメントの反応が遅いため、負荷や圧力の変化に迅速に対応できない。
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凍結の心配が少ない。
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冷却レグの延長が必要になる場合がある。
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背圧の軽減に有効。
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配管汚れの詰まりに弱い物がある。
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スチームトラップの種類、温調式はいかがでしょうか。下記のページで機械式と熱力学式について説明しています。ぜひこちらもご覧ください。
スチームトラップの種類 機械式(フロート式、バケット式)
スチームトラップの種類 熱力学式(ディスク式など)
蒸気に関するWebマガジン No.6
スチームトラップって、何?
一度蒸気システムを見たことのある方でしたら必ずスチームトラップを見たことがあることでしょう。蒸気システムにスチームトラップは不可欠ですが、そもそもスチームトラップにはどのような役割があるのでしょう。
蒸気が冷えて(凝縮して)ドレンになると、蒸気配管内や装置内には、蒸気とドレンが混在した状態になります。このドレンを排除するために、最下点に穴をあけておけば、ドレンは排出されますが、蒸気も一緒に出て行くためロスが生じます。
ドレンは排出して蒸気は逃さないための機器、それがスチームトラップです。
◆スチームトラップの役目
①効率的なドレンの排出
→装置内にドレンが溜まると熱伝達面積が減少し効率が悪くなります。またドレンが配管/装置内に滞留するとさまざまな題が出てくるため排出が必要です。
②効率的な空気の排出
→システムの起動時、配管内には空気が溜まっています。空気を排出しなければ、熱伝達が低下し始動に時間がかかります。
③蒸気は可能な限り漏らさない
→ドレンポケットや手動弁でもドレンは排出可能ですが、蒸気が漏れてしまいます。
◆スチームトラップの重要性
スチームトラップは単体として選定されることが多いのですが、システム全体に影響をあたえる重要な機器です。
弁の摩耗や裂傷、漏れ、設備の出力低下などはスチームトラッッピングに正しく注意を払っていれば改善可能であることも多いのです。
スチームトラップは真空から10MPaをゆうに超える圧力まで、広い圧力範囲において稼働することができます。様々な条件に適応するため、多種のトラップが製造されており、それぞれにメリット、デメリットがあります。どんな条件下にも万能なスチームトラップはありません。すなわち、正しいトラップを選定する必要があるということです。
ではスチームトラップにはどのような種類があるか詳しく見ていきましょう。
https://spiraxsarco.co.jp/blog/mt/blog/2017/07/-3------.html
正しいトラップを選定するには、どのような選定が必要なのかはこちらから。
https://spiraxsarco.co.jp/blog/mt/blog/2017/09/01-3.html