フラッシュ蒸気 第2回 発生のメカニズムと蒸気量
蒸気に関するWebマガジン No.44
フラッシュ蒸気 第1回をお読みでない方はぜひこちらからお読みください。
◆フラッシュ蒸気発生のメカニズム
フラッシュ蒸気は、ドレンの圧力が低下した際に一部が再蒸発し発生する蒸気のことです。水の温度が圧力低下後の沸点より高ければ発生します。つまり、20℃の室温の水でも、圧力が十分に下がると沸騰します。フラッシュ蒸気は発生する過程こそ違うものの、蒸気であることには変わりないのです。
通常、ボイラ内で水を加熱し発生させる蒸気を生蒸気といいます。実はボイラ内でもプロセスの負荷が高くなりボイラ内の圧力が低下するとフラッシュ蒸気が発生します。しかし、この場合にはフラッシュ蒸気は通常の生蒸気と合流してプロセスに供給されるので区別は困難です。ですので、ボイラで発生する蒸気については生蒸気と総称し、スチームトラップの二次側のように低い圧力で発生する場合に限りフラッシュ蒸気と呼ばれることが一般的です。このように生蒸気とフラッシュ蒸気を別の名前で呼ぶことから、残念ですが、フラッシュ蒸気は価値の低い蒸気と誤って認識されていることが多いのです。
◆ フラッシュ蒸気量
フラッシュ蒸気の再利用をする上で蒸気の発生量を知る必要があります。蒸気量は計算や表、グラフを利用して簡単に求めることができます。
熱交換器で0.7MPagの蒸気を250kg/h消費する例で計算してみます。
この場合だと、スチームトラップの一次側には0.7MPagの飽和水として到達し、二次側が大気圧下として排出されます。熱エネルギーに着目すると、一次側では飽和水のエンタルピーのみを保有している状態です。一方、大気圧下になった飽和水は熱エネルギーが余っているため(721.4kJ/kg >419kJ/kg)に、差分の熱エネルギーが一部飽和水に与えられて再蒸発します。この与えられた熱エネルギーは蒸発のエンタルピー(気化熱)と呼ばれます。このフラッシュ蒸気の発生率を計算式に表すと下記の通りになります。
発生量はグラフでも求めることができます。
飽和水は250kg/hなのでフラッシュ蒸気の発生率を掛けるとフラッシュ蒸気量が求められます。
フラッシュ蒸気量=ドレン量xフラッシュ蒸気発生量
フラッシュ蒸気量=250 x 0.134 =33.5
つまり250kg/hのドレンから33.5kg/hのフラッシュ蒸気が発生します。
従って、高温ドレンから発生するフラッシュ蒸気をどうすれば有効に利用できるかを検討すべきです。せっかくボイラ室まで戻しても、ボイラ給水タンク(ドレンタンク)の排気管から大気に放出しているケースを多々見受けられますので、何らかの対策が必要となるケースが多くあります。
次回は、これらフラッシュ蒸気の効率利用についてです!