スチームトラップとして必要な機能
蒸気に関するWebマガジン No.91
スチームトラップは蒸気の凝縮水(ドレン)を排出する自動弁で、
(1) | ドレン量の変動に対応できる十分なレンジャビリティーを持ちドレンが少ない場合でも蒸気漏れを起こさないこと |
(2) | 本体内に高圧高温水が流れるため放熱によるエネルギー損失が大きいので、トラップ本体はできるだけコンパクトなこと |
(3) | 始動時に装置や配管内に充満し、加熱時は熱抵抗となって熱交換を妨げる非凝縮性ガスを迅速に排出する機能を持つこと |
以上3点がスチームトラップとして必要とされる機能です。
これら3つの機能を比較的良く備えたトラップはバランスプレッシャー式トラップです。バランスプレッシャー式トラップは本体がさらにコンパクトで、放熱ロスが極めて少なく設計されたトラップです。また自動空気抜き弁としてこのバランスプレッシャー式トラップを内蔵したフロート式トラップは、ドレンを連続的に排出できることと合わせて極めて高性能なトラップと云えるがトラップ本体がどうしても大きくなり、その分放熱ロスが増加するので保温されることが望ましいといえます。バケット式トラップはフロート式に比べフェール・オープンという利点を持つが、本体が大きく空気排出能力に乏しいので、加熱装置に使用する場合には空気抜き能力に優れたバランスプレッシャー式トラップと併設する事が必要となるのでフロートと比べてどうしてもコストアップになりやすくなります。
ドレンの再蒸発(フラッシュ)蒸気で閉弁するディスク式トラップは、蒸気漏れがなくまた本体がコンパクトなので放熱ロスが少ないが、ドレン排出が断続的なので連続的にドレンを排出することが必要な熱交換器に最適とは云えないのです。個々のトラップの放熱ロス比較については表1を参照してください。
測定条件:蒸気圧力1.0MPag, 蒸気単価 2.5円/kg, 稼働時間 8,000時間/年
※放熱係数:ディスク式トラップの放熱量を1とした場合の倍数
固定オリフィス式は負荷変動に対応できる自動弁機構が無いので、負荷変動が少ない24時間稼働のラインにおいて使用できる可能性はあるが空気排出能力が乏しいので、始動時間が長くなったり加熱装置に使用すると熱効率が低下するリスクがあります。
適正なトラップの選定は、その用途や使用する装置あるいは設置箇所、蒸気圧力などによって異なりますが、参考のため一般的な用途に推奨されるトラップを表2に示します。
省エネルギーのポイント
スチームトラップは表1のように高圧高温水が本体内を流れるのでトラップ本体からの放熱による熱損失が大きい。したがって省エネルギーの観点からは蒸気主管まわりのトラップとしては、蒸気漏れが無くよりコンパクトなディスク式を選定することが望ましいといえます。
ただ一般的に使用されているディスク式トラップは少量の蒸気を漏らしながら閉弁するので生蒸気の損失が1.0~1.5kg/h程度あると説明しているメーカーもあります。ですが当社のディスク式トラップはISOのテスト結果でも直前の配管内に水封を維持することによって、蒸気漏れがほとんど無く放熱ロスも少ないことから比較的省エネルギー性が高いトラップとして報告されています。
(※参考文献:ISO7841)