スチームトラップの種類-熱力学式
蒸気に関するWebマガジン No.122
スチームトラップの基本的な目的はドレンを排出し、蒸気は漏らさない事です。
スチームトラップ内部に他の動力はなくなぜ排出できるのか?それは蒸気配管側や装置の圧力と、スチームトラップ二次側のドレン配管の圧力との差、差圧を使用しているからです。
そのためスチームトラップ二次側配管が立ち上がっていても、蒸気側の圧力が十分にあればドレンを排出することが可能です。
スチームトラップの種類
スチームトラップは温調式、機械式、熱力学式の3つに分けられます。
用途別スチームトラップチャート
今回はこの中の熱力学式スチームトラップの動作、メリット/デメリットについて解説します。
熱力学式スチームトラップ
熱力学式スチームトラップは、トラップを通過する際のフラッシュ蒸気の動的効果によって動作します。
熱力学式スチームトラップには4種類あります。
ディスク式、インパルス式、ラビリンス式、固定オリフィス式
この中からディスク式スチームトラップについてのみ、解説します。
ディスク式 |
ディスク式の構造は非常に単純で、可動部品はキャップ内部の平面上にあるディスクのみです。始動時に流入する圧力によってディスクが上昇すると、低温のドレンと空気がディスク下部に内部リングに流れ、出口から排出されます。ドレンの温度が次第に上昇すると、トラップ入口を通る時に蒸気が発生する。このフラッシュ蒸気はドレンよりも容積が大きいため、流速が早くなります。ベルヌーイの定理*1に従い、高速の蒸気によってディスクは弁座に引き寄せられます。 *1:ベルヌーイの定理:動いている流体においては、全ての点における総圧力は同じである、ということを述べています。その総圧力は流体の静的圧力と動的圧力の合計です。静的圧力は圧力計で測定されたもの、動的圧力は流体の個々の粒子が障害物に衝突して停止させられるときに、それらの粒子が作り出す圧力です。動的圧力は粒子の速度が速くなるほど高くなります。 |
ディスク式の作動
メリット | デメリット |
動作範囲全体で動作が可能(内部部品交換/調整なしに) 小型で軽量 高圧や過熱蒸気に使用可能 ウォーターハンマーや振動による影響を受けづらい サイズに比べドレン排出量が大きい 凍結による破損の可能性が少ない |
非常に低い差圧では動作が確実ではない 空気障害を発生することがある。*2 排出音が大きいことがある ディスクの摩耗のおそれがある |
*2:流入圧力がゆっくりと形成されれば、始動時に大量の空気を排出されるが、急激に圧力が形成されると、高速の空気が蒸気と同様にディスクを閉じてしまい空気障害が発生することがあります。
その他のスチームトラップの作動
温調式と機械式については下記ページにて順次解説いたします。ぜひこちらもご覧ください。
スチームトラップの種類 温調式(バランスプレッシャー式など)
カタログはこちらをご覧ください。