蒸気に関するWebマガジン|スパイラックス・サーコ
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温水製造におけるバッチ式と連続式の違い

蒸気に関するWebマガジン No.63

蒸気で温水を製造することは最も一般的なアプリケーションです。その製造方法も加熱方法では直接蒸射と間接加熱にわかれ、それぞれがバッチ式と連続式にわかれます。

1.直接蒸射

tyokusetsu.jpg水を張ったタンクの中や水の循環ラインに直接蒸気を蒸射して温水を製造する方法です。水中に蒸射された蒸気は温水となり、タンクや循環ライン中の水の質量を増加させることになり、温水がオーバーブローすることもありますが、加熱装置としては、サイレンサーやインラインミキサー等、安価な機器を使用できるので、設備コストが安く大量の蒸気エネルギーを水に与えることができます。

2.間接加熱

Kansetsu_1_アートボード 1.jpgシェル&チューブ熱交やプレート式熱交を使って貯湯槽の加温や連続式給湯器として温水を製造する方法です。間接加熱なので給湯用の水に蒸気が混入することも無く、よりクリーンで質量が増えることもありません。
従ってオーバーブローのリスクは減少するが熱交換器からドレンとして排水されるので、エネルギーの効率的な使用を考えるとドレン回収が必須となります。

これらのことから、温水製造の選択肢は広いですがそのニーズに基づいて直接/間接の使い分けはされていますが蒸気消費量は同じでも瞬間蒸気流量に大きな違いがあることに気付かず、結果として蒸気量が不足しボイラ圧力が低下する等のトラブルの原因になっているケースを見掛けます。

3.連続式とバッチ式における瞬間蒸気流量の違い

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600ℓの水を1時間で20℃から60℃まで加熱するのに必要な熱量はバッチ式でも連続式でも同じです。これは、次の式で計算します。
Q = m x Cp x (t2 - t1)
Q : 必要熱量
m : 質量
Cp : 比熱
t2 : 水の目的温度
t1 : 水の初温
従って連続式でもバッチ式でも、消費する蒸気量は同じであるがここに大きな落とし穴があるのです。

連続式の場合は、600ℓ/時なので10ℓ/分の水を20℃から60℃まで加熱し続けるので蒸気温度と水の温度差は常に一定で、蒸気量も1時間を通して一定となります。
しかし、バッチ式の場合はタンクに600ℓの水が20℃貯水されており1時間後には60℃まで昇温することになります。蒸気と水温との温度差は水温の上昇に沿って変化し続けます。先の計算でもとめた蒸気量は水温が40℃の時の蒸気消費量でその値を100%とすると20℃の時は122%、60℃の時は78%(蒸気圧力を0.2MPagとして計算)と変化するのです。
これがバッチ装置における蒸気の流れ方で配管設計やボイラの能力に直接影響を与えるリスクがあります。
貯湯槽(バッチ)からEasiHeat(連続式温水製造器)への変更は、蒸気のピーク負荷を抑えるという点で、とても有益な方法で冬場に蒸気量が不足する工場では一つの解決策となり得ます。
また、どうしてもバッチ装置でピーク負荷を低減する必要がある場合は水温を上昇させて給水する「湯張り」という方法がピーク負荷の低減と昇温時間の短縮という二つの点で利点があります。

Change of Steam temp and Water temp.png

お湯を沸かすというシンプルなニーズに対してその方法は直接蒸射、間接加熱、バッチ式、連続式等に分類され、それぞれ利点、欠点、効率、安全性が異なります。
まずどの給湯システムが工場の現状に最適でメリットがあるのかを一度考えてみてはいかがでしょうか?

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温水をつくる-貯湯槽編- はこちら

温水をつくる-瞬間給湯編- は次回公開予定です。