蒸気に関するWebマガジン|スパイラックス・サーコ
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First for Steam Solutions

蒸気の見える化の落とし穴 第1回

蒸気に関するWebマガジン No.48

省エネには計測、つまり「見える化」が必須

business_think.gif蒸気の見える化に使われているのは「蒸気流量計」です。しかし、使用されているユーザーの方々からは
・蒸気流量計は精度が悪く役に立たない!
・蒸気流量計の蒸気量とボイラの給水量が合わない!
・蒸気流量計は目安にしかならないのに高すぎる!
・蒸気が流れているのに計測しない!
等の厳しいご意見を頂くこともあるのです。
皆さんは心当たりはありますか?
実は、これらは単に蒸気流量計の精度や計測原理の問題だけではないのです。蒸気の基本性質を十分に配慮した施工やシステムが構築されているかどうかによって、精度に大きな差異が生じることに起因しているのです。


◆正確な蒸気流量計測に必要な機能

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ここからは専門的な解説になります。
蒸気流量を正確に計測するには、何が必要でしょうか。それは蒸気の負荷変動を最大流量から最小流量まで捕捉することです。そのためには蒸気流量計の必須項目として下記の機能が言えます。
① 低流速でも計測できる十分な感度をもつこと
② 計測範囲において高い精度を維持すること
③ レンジアビリティが広いこと
④ リアルタイムで比容積補正をおこなうこと
⑤ 蒸気の乾き度による流量補正を行うこと
など、ハードはもちろんのこと、ソフト的な機能を必要としています。これらのいずれが欠けても蒸気流量を正確には計測することはできないのです。

① 優れた低流速計測性能

蒸気流量計には種類があるが、「可変オリフィス式蒸気流量計」は優れた低流速計測能力を持った製品です。
ここで可変オリフィス式と渦式の低流速域における計測性能の比較を見てみましょう。図1の条件下では、渦式流量計の計測限界はおよそ2.8m/sです。これらの差は、可変オリフィス式が可動コーンをもつことにより最適な位置で差圧を計測する方式であるのに対して、渦式流量計の場合はカルマン渦による流速換算のベースとなるストローハル数と呼ばれる常数が低流速域では一定でなくなってくることによるものと考えられます。


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② レンジアビリティと測定誤差

「レンジアビリティ」は流量計の性能を表す代表的な尺度です。なぜなら、測定誤差と密接に絡んでいるからです。
図2をご覧ください。このグラフは、蒸気システムのスタートアップ時には蒸気量が最大になり、定常運転に入ってからは装置側の負荷に応じて変化する、という経過を示したものです。従って蒸気流量計はこれらの最大値から最小値までの大きな変化を計測しなければなりません。例えば可変オリフィス式を最大流量時に1,000kg/hのラインに使用したと考えると、レンジアビリティは100:1のため下限の最小計測値は10kg/hとなります。一方このラインにオリフィス式流量計を用いたとすると、レンジアビリティが4:1のため最小計測値が250kg/hとなり、この値以下のデータは全て0kg/hと見なされ、時間経過と共に測定誤差として累積されてしまうのです。

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③ 各種流量計のレンジアビリティ比較

各種流量計のレンジアビリティの比較を図3にまとめました。この図では蒸気流速を代表的な実用流速である35m/s時を基準にして比較しています。この場合、渦式流量計はレンジアビリティが12:1程度です。

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次回は配管内の蒸気の流れ状態を正しく理解するために蒸気の流れ状態と汽水分離機(セパレータ)について解説します。