フラッシュ蒸気 第1回
蒸気に関するWebマガジン No.43
工場の煙突や配管の先から、「もやもやしたもの」が立ち上がっています。
いつも見慣れている光景ですが、実は、同じ"もやもや"でも、「煙」と「湯気」は違います。
今回は、タンクの大気解放管や、スチームトラップの出口から出ている「白い湯気」についてのお話です。もしかしたら、再利用する価値のある資源かもしれませんよ。
「白い湯気」の正体は、「フラッシュ蒸気」?
高圧状態にある水が、より低圧下に降下すると、熱を加えなくても再度、蒸発する現象があります(再蒸発)。その再蒸発蒸気の事をフラッシュ蒸気と呼んでいます。例えば、高圧下にあるドレンが、大気圧に降下(開放)すると、ある一定の割合で、フラッシュ蒸気が発生し、その一部が凝縮の過程で「白い湯気」となって目視できるようになるのです。つまり、「白い湯気」は、フラッシュ蒸気によるものとも言えます。
「 フラッシュ蒸気」は分かったけど、それがどうしたの?
フラッシュ蒸気と言うと、何やら、ボイラーから発生する飽和蒸気と違う様に思えるかもしれません。しかし、それらは全く同じ物性を有した蒸気であり、他の蒸気設備で使用することが可能です。
でもその フラッシュ蒸気を、他の蒸気設備で再利用して何かいいことあるの?
タンクの大気解放管や、スチームトラップの出口から出ているフラッシュ蒸気は、大気中に"捨てている"状態です。もし、この捨てている蒸気を他の蒸気設備で再利用できれば、その分、ボイラーで発生させる蒸気量を減らせることになり、減らした分、省エネに繋がるのです。
なるほど。でも、再利用するほどメリットってあるのですか?
適切な再利用先があることと、どれだけ" 捨てている" のかを、お客様毎に調べる必要がありますが、設備によっては10% 以上のエネルギーを捨てていることがあります。
0.7MPag、100kg/h の蒸気を利用する機器(熱交換器)の理論値で見てみましょう。
この場合は、スチームトラップから排出されるエネルギーは、全体の26%で、フラッシュ蒸気には、11% のエネルギーが使用され、13kg/h(0 MPag)の蒸気量を発生させます。これは、経済面、環境面を考えても再利用するに値する価値あるものと思えませんか?
え!そんなに?
フラッシュ蒸気の再利用の可能性を感じて頂けましたでしょうか?お客様に合わせたご提案をさせて頂きますので、詳しくはお近くのスパイラックス・サーコのエンジニアまでご相談ください。
次回のブログでフラッシュ蒸気の発生のメカニズム、発生蒸気量について詳しく解説します。
+α 湯気と煙の違い
湯気は気化した水分が水滴として析出し白く見えるものです。湯気の成分は水滴= H2O です。温泉や火山の上に見えている白い靄はほぼ湯気です。
黒や灰色の煙は、有機物を燃焼した際に不完全燃焼であると発生するものです。その際に煙に含まれる成分は、炭素が多くを占めますが、燃やす有機物によります。多くの場合、水蒸気も含まれます。例えば、バーベキューで使用する炭は、煙が出ません。これは既に有機物が炭化しているためです。
次回はフラッシュ蒸気の発生のメカニズムと蒸気量について解説します!
ドレン回収についてはこちらで解説しています。