蒸気に関するWebマガジン|スパイラックス・サーコ
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ドレン回収 第1回 ドレン回収とは?

ブログタイトルD.jpg蒸気に関するWebマガジン No.37

ドレンの持っているエネルギー

蒸気が凝縮してドレンに戻るとき、熱エネルギーは加熱対象である低温物質に向かって移動します。このとき利用されるエネルギーは、蒸気を発生するためボイラに供給したエネルギーの約75%に過ぎません。すなわち、残りの約25%のエネルギーは凝縮したドレンの中に蓄えられているのです。

蒸気凝縮.gif

 ドレンは、このような熱エネルギーを持つだけでなく、理想的なボイラ補給水なので、効率的な蒸気システムの設計には、可能な限り多くのドレンを回収し、ボイラ給水として再利用したり、プロセス中で加熱熱源として有効に利用することが必須です。

 ドレンは、スチームトラップによって高圧から低圧域に排出されます。この圧力降下によって、ドレンの一部は再び蒸気に戻ります。この蒸気を「フラッシュ蒸気」や「再蒸発蒸気」と呼び、その発生率は、高圧から低圧域への圧力降下の大きさによって変化しますが、質量で10~15%というのがごく一般的な値です。

即ち、ドレン中のエネルギーの約半分(蒸気発生のため使用した全エネルギーの12.5%)は、フラッシュ蒸気が保有していることになります。

 したがって、フラッシュ蒸気の回収は、エネルギー効率の高い蒸気システムを実現する上で極めて重要な命題であると言えます。

フラッシュ蒸気量.gif

◆ドレンをボイラに戻すメリット

効率的な蒸気・ドレンループでは、蒸気使用設備から排出される高温のドレンをボイラ給水システムへ戻すことは必須です。燃料費を削減以外にも下記のようなメリットがあります。

1.経済的価値
1.経済的価値.jpg

ドレンが保有するエネルギーの評価について、ここで明確にする必要があります。どのようなドレンであっても、ボイラ給水タンクに戻せない場合には、代替として低温の補給水をボイラに供給しなければなりません。この補給水はホイラ補給水として最適な90℃まで加熱されるのが一般的であり、ドレンを回収すれば、このエネルギー・コストが節約できます。

2.補給水の費用
2. 補給水の費用.jpg

ドレンを回収しなければ、代わりに軟水が補給され、使用した水および水処理費用を支払わなければならなくなります。この費用が節約になります。

3. 排水処理費用
3. 排水処理費用.jpg

高温の廃水を公共の下水に放流することは禁じられています。その理由は、環境に対して好ましくないこと、また下水用の土管等を破損する恐れがあるためです。ドレンは廃水規制温度より高温のため、事前に冷却しなければなりません。ドレンを回収すれば、この排水処理費用および冷却費用が軽減できます。

4. ボイラの蒸発量
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低温の水をボイラに補給すれば、ボイラの蒸気発生能力が減少する事になります。ボイラの蒸気発生能力については、色々な表現方法があり、通常その定格は様々に表示されています。ですが、どのような定格であっても、「1000cc の水を供給したときに発生する蒸気量(kg)」に換算することはできます。そして、供給水の温度が低ければ低いほどボイラからの蒸気発生量は減少することは明らかです。

5. ドレンは理想的なボイラ補給水
5.ドレンは理想的なボイラ補給水.jpg

ドレンは蒸留水であり、溶存固形物(TDS)はほぼ完全に除去されています。したがって、ドレンを回収すれば、ボイラのブローダウン量を削減できます。ブローダウンは、溶存固形物の濃度を減らす目的で行われますがブローダウン量を削減できれば、ボイラから排出される熱エネルギーも節約できる事になります。

次回はドレン配管の口径選定はむずかしい!です。