蒸気に関するWebマガジン|スパイラックス・サーコ
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First for Steam Solutions

スチームトラップマネジメント 第1回

蒸気に関するWebマガジン No.88

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蒸気システムにおいて、スチームトラップというのは欠かせない設備ですね。蒸気システムにおいての理想のひとつはいかに蒸気だけを供給することができるかという点です。スチームトラップはその名前の通り、蒸気(スチーム)を捕らえて(トラップして)、その他の流体を蒸気システムから排出する設備です。

スチームトラップの定義

ISOやJISの規格では "蒸気機器から凝縮水を自動的に排出し,原則として閉弁の間は生蒸気を漏らさない弁装置を内蔵しているもの"と定義されています。またその種類は大きく作動原理により3種類に分類されており、それらはそれぞれ『機械式』『温調式』『熱力学式』と呼ばれています。それぞれその作動方式の中でもよく見かけるものがフロート式、バケット式、バイメタル式、バランスプレッシャー式とディスク式の5つがあり、大手のスチームトラップメーカーではおおよそこの5つのスチームトラップで使い分けがされます。

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スチームトラップの役割と選定

スチームトラップの役割は定義されている通り、蒸気システムからのドレン排出であり、蒸気システムが設計された通り蒸気で満たされて稼働することが唯一にして最大の役割です。

①ドレンの排出能力

まず一番重要な選定基準は『ドレンを排出できる』ことです。

●圧力 ●温度 ●流量

通常のドレン排出であればこの3点さえ仕様を満足しておけば、上の5種類のスチームトラップのどれを選定しても、設置環境を整えてあげることでドレンの排出は可能です。また過熱蒸気の場合には温度と流量を複数検討する必要がある場合もありますので気を付けましょう。

②一次側のドレン溜り

スチームトラップはドレンを排出するのが仕事ですが、その作動方式によってはドレンの排出能力が足りていても一次側に一定量のドレンを保有してしまうことがあります。これは場合によっては『蒸気システムを蒸気で満たす』という役割の邪魔になってしまう可能性があります。特に熱交換器のドレン排出では加熱能力に直接影響がでやすいため水位を感知しているトラップであれば、一次側にドレンがたまることはないため、機械式トラップが推奨になります。その他のトラップでも一次側配管をしっかり設計することによってこのデメリットは解消できますが、設計の自由度を考えるとやはり機械式トラップを選んだ方が無難といえるでしょう。

③フェールオープンとフェールクローズ

スチームトラップは可動部がありますので、故障は発生します。ここで注意すべき点は壊れた際に『ドレンを排出できない』か『蒸気を漏らす』かです。ここに関してはアプリケーションごとによって優先順位が変わってきますが、ポイントは大きく2つで『すぐに気づけるか』と『すぐに直せるか』です。ここでも注意すべき点は蒸気システムからのドレン排出の優先です。配管の中間トラップ等はすぐに気づくことまたすぐに直すことも容易ではないケースが多いためウォータハンマ―の危険性が付きまといますのでフェールオープンにすべきでしょう。

④空気の排出能力

蒸気配管には空気が混入してしまうことがどうしてもあります。特に24時間稼働でない場合には、毎日ボイラー休止時には高確率で配管内に空気が入ってきてしまいます。空気は非常に優秀な断熱材であるため、蒸気システムとしては当然排出できることが好ましいです。この場合には、蒸気配管の管末に空気抜き弁を設置することと装置でもなるべく空気障害解消機能を持ったスチームトラップが推奨になります。

⑤蒸気障害

アプリケーションによっては蒸気障害といわれる現象が発生します。これは回転機などでトラップの一次側にドレンより先に蒸気が来ることによってスチームトラップがドレンがないと判断してしまいドレン除去ができない場合です。こういった場合には蒸気障害解消機能付きのスチームトラップを選定しましょう。

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スチームトラップの作動

各スチームトラップの作動についてはこちらの動画で纏めてあります。ぜひご覧ください。

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スチームラボ|スチームトラップ (spiraxsarco.co.jp)

次回

スチームトラップはスチームトラップに到達したドレンしか排出できません。なのでドレンが発生してからしっかりとスチームトラップに到達するように配管を設計してあげることが非常に大切です。第2回ではドレンがトスチームトラップに到達するまでの道のりを見ていきましょう。