蒸気に関するWebマガジン No.71
前回のスチームラボでは、DF1型ディフューザを大気開放した際の実験を行いました。 今回はDF2型ディフューザの2次側にも透明配管を接続し2次側が満水の場合の実験を行いました。息継ぎ現象についても解説しています。
ディフューザーとは、配管末端に取り付け、高速排出の緩和により騒音と浸食の問題を軽減する蒸気配管用機器です。
実験のリクエストを受け付けております。ご意見、ご感想もよろしくお願いします。 https://forms.gle/NoNxKH9iban8PtXc9
ディフューザの詳細はこちらから。
蒸気に関するWebマガジン No.32
制御のお話 第八回
前回は『制御対象と目的』でした。
コントローラー
今までお話ししてきた制御、その主役が「コントローラー」と言えます。
温度制御であれば、目的の温度を設定し、今の温度はどうなっているかを確認するのも、このコントローラーで行うことになります。
センサーの状態及びアクチュエーターの動きを確認することは稀ですが、コントローラーが制御している状況は、常に何らかの方法で確認していることが多いです。
例えば、殺菌工程のような場合、必要とされる殺菌温度を維持できているかを、常に監視及び記録することは、殺菌ができていることを保障するための貴重なデータとなります。
左が当社のSX35型と呼んでいるハーフサイズのコントローラー、右がフルサイズのSX36型コントローラーです。両方とも縦寸法が96mm、横寸法がSX35が48mm、SX36が96mmです。
基本的な機能面は同じなので、コンパクトさが重要であればSX35、操作性や表示の見易さを重視するのであればSX36というような選び方をします。
仮に上記のような表示例で、蒸気を使った加熱制御を行っている場合を想定してみましょう。
設定したSP目的温度(50℃)よりも、PV現在温度(20.8℃)の方が低いので、バルブを今の開度よりも更に開けて蒸気をより多く供給するようにするのがコントローラーの動き(役割)になります。逆に冷却制御であれば、目的温度(50℃)より、現在温度(20.8℃)の方が低いので、冷え過ぎを解消するために、冷却用のバルブを閉めることになります。
このように、目的に応じてコントローラーがバルブを開け閉めするという、極めて重要な役割を担っているのです。
また、表示に関していうと、温度センサーの測温抵抗体や熱電対場合には、使用するセンサーの種類と小数点以下を表示する/しないを設定すればOKです。ですが、温度制御以外のトランスミッターを使用する場合は、4~20mA の電流信号になるので、制御対象に応じて表示設定を行うことになります。
例えば、圧力制御でトランスミッターのレンジが 0.00 ~ 1.00MPa の場合には、コントローラーの表示を小数点以下2ケタ表示に設定して、表示レンジを「 0.00 ~ 1.00 」にします。
流量制御であれば、流量計の測定レンジが 0~1,000kg/h であれば、小数点以下を無しにして「 0~1000 」にします。
湿度制御であれば「 0.0~100.0 」%というようにすれば、コントローラーの表示が分かりやすくなります。
最新の装置には、コントローラーではなく、タッチパネルを使用したタイプが多く見られるようになってきました。写真は当社製の温水製造ユニットですが、タッチパネルが採用されています。
このように、制御はどんどん進化を続けているので、これからが楽しみですね。
今回より「制御のお話し」は、おしまいです。
次回は『減圧弁とタービン等による発電後の減圧蒸気の違い』です。ぜひこちらからご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.31
◆制御のお話し 第七回
前回は電動式アクチュエーターについて解説しました。
制御対象と目的
何を制御するかで制御名称が決まります。温度を維持したければ温度制御、圧力なら圧力制御になります。
蒸気及び高温水を対象として、制御種類は大きく分けると以下の5種類が考えられます。
このように、温度センサー制御に使用する温度センサーの信号を除くと、電流信号である4~20mAが主に使用されており、日本ばかりでなく、世界的に見てもこの傾向は同じと言えます。
■温度センサー
蒸気と高温水を温度制御する場合に使用する温度センサーは、「測温抵抗体」と「熱電対」の2つが代表的なものと言えます。
白金(Pt)は0℃の時に、100Ωの抵抗値が得られ、温度が上昇すると、抵抗値も上昇します。
0℃の時には100Ω、160℃の時には161.05Ω、というように世界統一規格になっているので、海外製品でも日本で問題なく使用できます。
異種金属を先端で溶接し、その先端部の温度が0℃の時に 0mV 、温度が上がれば電圧も増加します。
熱電対は使う金属によって特徴が異なり、以下のような種類があります。↑の写真のものは補償導線の色が茶色なので、Tタイプと判別できます。
他の 圧力、水位、湿度、流量のトランスミッターは、検知機構はさまざまですが、形状は似たようなものになりますので、ここでは2種類を紹介します。
圧力トランスミッター 水位トランスミッター
次回は「コントローラー」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.30
◆制御のお話し 第六回
前回は他力式アクチュエーターについてのお話しでした。
電動式アクチュエーター
電動モーターを動力源として使用し、モーターの横回転をギヤを使って上下動に変えて、バルブを開けたり閉めたりします。 ※上下動でバルブを開閉する点は、空圧式と一緒です。
下図のように、電源の接続の仕方によって、モーターが右回転または左回転します。そのため、空圧式のように用途によってスプリングの位置を変える等の構造を変える必要がなく、加熱用途/冷却用途共に外観の違いはありません。
これを比例制御に使用する際には、「ポテンショ・メーター」と「ポジショナー・カード」というものが追加されます。
ポテンショ・メーター バルブの開度を抵抗値の変化によって検知する、ボリュームのような抵抗器
ポジショナー・カード 制御信号がバルブの開度と一致するようにモーターを正転、または逆転させる基板
空圧式と電動式の違いをまとめると、表のようになります。さまざまな要件を検討した上で選択することが重要です。
スパイラックス・サーコの電動式アクチュエータの詳細はこちらをご覧ください。
次は「制御対象と目的」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.29
◆制御のお話し 第五回
第4回ではアクチュエーターについてお話ししました。
他力式アクチュエーター
バルブを開けたり、閉めたりするのがアクチュエーターであり、前回は自力式の外部の駆動源を必要としないタイプのお話をしました。
今回は他の動力源を必要とする他力式アクチュエーターのお話しをします。他力式の駆動源は、大きく分けると空気式と電気式に分かれます。
空気式アクチュエーター
圧搾空気スペースに空気を供給し、スプリングの力を上回るとダイヤフラム部を持ち上げることになるので、連結されているバルブも開いていきます。空気を抜くと、スプリングの力が掛かっているのでダイヤフラム部が下がってくるので、連結されているバルブも閉じていきます。
この圧搾空気スペースの圧力を調整すれば、バルブを比例的に開けたり閉めたりすることができます。
駆動源の空気がなくなると、スプリングの力によってバルブが必然的に閉まります。
加熱アプリケーションの際には、アクチュエーターに何らかのトラブルがあった際に、バルブを閉める方が安全性が高くなります。
最近は生産性向上よりも、安全性を向上させる方が優先度が高い傾向にあるので、加熱アプリケーションに広く使用されています。
逆に、冷却アプリケーションの場合、アクチュエーターに何らかのトラブルがあった際に、過冷却になったとしてもバルブを開けている方が安全性が高くなります。したがって、スプリングの位置を逆にして、スプリングの力でバルブを開くようにしたのが、冷却用のアクチュエーターです。
外観は同じに見えても、スプリングの位置を変えるだけで、動きが逆になる(できる)ので、歴史も長く、幅広い分野で今でも広く使われています。
そして、バルブ開度を正確にコントロールするためのポジショナという機器が搭載されているのが一般的です。
次回は「電動式アクチュエーター」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.28
◆制御のお話し 第四回
第3回では時間比例制御についてお話ししました。
アクチュエーター とは?
バルブを開けたり、閉めたりする機構を備えた機器がアクチュエーターです。
バルブを流れる流体(加熱であれば蒸気、冷却であれば冷水)の量を増減させて温度をコントロールしようとするのがアクチュエーターの役割です。
大きく分けると2つに大別されます。
1つは自力式と呼ばれる自己完結型のタイプです。次回(第五回)で紹介する、電気や空気という他からの駆動源を必要としないので、据え付けも比較的容易になるため、手軽に使えるというメリットがあります。
設定温度に対して±1℃以内というような、制御精度を厳しく要求されるアプリケーションには使用できませんが、例として"80℃位を維持できれば良い"というようなアプリケーションであれば、適しています。
電機を使わないので、防爆エリアや屋外でも使用できるというメリットもあります。
今回は、この自力式を紹介します。(写真:KA33型温調弁+SA121型アクチュエーター)
作動内容を簡単に説明しましょう。
上図のピンク色の部分には、油が封入されています。
タンクの加熱を例にしてみます。
温度感知部内の油が、加熱されていくと膨張していきます。膨張によってプッシュロッドが伸び、バルブ(赤い部分)が上方向に移動することでバルブが閉じていきます。
逆にタンク内の水温が下がれば、油が冷えて体積が減少するので、プッシュロッドもその分下がってバルブが開くのです。
アクチュエーターは、油の膨張及び収縮による単純な作動しかできないので、バルブの方で加熱または冷却ができるように工夫しています。
自力式アクチュエーターの動きをまとめると、このようになります。
次回は、「他力式アクチュエーター」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.27
◆制御のお話し 第三回
第二回では電磁弁などを使ったONかOFFかの供給による制御のお話しをしました。
これに時間軸を加味したのが時間比例制御方式です。
出力100%のON、または出力0%のOFFのいずれかになるので、比例周期と呼ばれる時間軸を加味して、結果的に供給量を比例的にしたものです。
一見、これで完璧と言いたくもなりますが、加熱源(この場合は蒸気)の供給が100%能力供給またはゼロという流れが問題になります。
例えば、ガスコンロを思い浮かべてください。左の図のように、ガスの調整ダイヤルを右に目一杯回しきっただけの最強の強火のみで調理ができますか?
野菜炒めのようなガスの強火で野菜をシャキッと炒める場合は良いかもしれませんが、カレーやシチューのようにことこと煮たい時には不向きとなります。
右の図のように、調整ダイヤルを左に戻して炎そのものを弱くし、ことこと煮るのに適した火加減(熱源)にします。他にも、同様の事例がたくさんあると思いませんか?
グラフでイメージにしてみると、こんな感じでしょうか・・・
同じ加熱出力量(25%)であっても、熱の供給方法は違った形になります。グラフを見ても分かるように、連続的に供給し、加熱量を増減させた方が、様々な意味で利点が多いのが想像できると思います。
加熱源(冷却の場合も同様)を連続的に供給するのを基本としているので連続比例方式と呼ばれており、現在の主流の制御方式となっています。
次回は、「アクチュエーター」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.26
◆制御のお話し 第二回
第一回でお話ししたように人間が行う手動制御では色々と問題点が出てくるのでその対策として考えられたのが自動制御です。
自動制御とは・・・
「電気や空気などのような、他の動力源を使って行う制御」のことです。
蒸気の世界に限定すると蒸気の供給を行うのに大きく2つの方法があります。
1. 電磁弁を使ったピストン弁によるONかOFFかの供給
このようにONの時には、バルブを通過する蒸気の全量が一気に入りOFFの時には一気に止まります。これが電磁弁を使った蒸気の流れの特徴です。上の写真はピストン弁の例ですが電磁弁を使って直接蒸気の供給をON-OFFすることも多用されています。
ここでジャケット釜で水を加熱し40℃のお湯にすることを考えてみます。40℃になるまで電磁弁ONで一気に水温が上がっていきます。
40℃になったので電磁弁をOFFにしても蒸気スペースに残った蒸気の熱で水温が上がり40℃を超えてしまいます。この温度超過分をオーバー・シュートと言い、ON-OFF制御の弱点とされています。40℃以上になることが許されない場合には何らかの対処が必要になります。
ならばオーバー・シュート分を見込んで若干設定を下げたら良いというアイデアが生まれてきます。常に同じ条件(水温や水量、外気温等)なら上手くいくかもしれません。しかし条件がその都度違う場合は何度下げたら上手くいくかが予想が付かないので、現実的な対処と言えません。
そこで時間比例制御方式が考案されました。
例えばバルブから流れる蒸気量の25%分を供給したいとします。比例周期を20秒とすると25%分供給したいので5秒間ON、15秒間OFFとなります。20秒経過した時点で今度は何%にするかを決めるわけです。
水温の上昇の仕方を見ながら目標温度に達するまで繰り返していけばオーバー・シュートを防止することもできます。
比較的簡易な方法なので、蒸気ばかりでなく様々な分野で応用されています。
次回はもう一つの供給方法についてお話しします。 こちらからご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.25
◆制御のお話し 第一回
制御とは・・・
JIS Z 8116 によると
「ある目的に適合するように、制御対象に所要の操作を加えること」
と定義されています。
例えて言うと、ホテルでお風呂にお湯を張ろうとした時の温度の調整方法を想像してみてください。
この繰り返しを何回か行って、希望の温度にするはずです。 【図を拡大】 これも立派な制御ということになり、手のひらが温度センサー、脳がコンピューター、指が操作器ということになります。
そして、温度を調整しているので、温度制御ということになります。
蒸気はクリーンな加熱源とされており、食品のような日常品から医薬品や半導体など、さまざまな分野で広く使われています。
蒸気での加熱を考えた場合、代表的と言えるのが"蒸し〟です。
例えば、蒸籠を使って蒲鉾を蒸すことを考えてみます。
蒸気の温度計を見ながら、蒸気の量を加減するようにバルブを操作して蒸すことができますが、以下のような問題が出てきます。
・常に人が温度計を見ながら、バルブ調整を行う必要があるので、その間人手が割かれます。
・人によって、温度調整にうまい/へたがあるので、常に同じ蒸しができるとは限りません。
製品の歩留まりも重要ですが、人手が割かれるのが、現代の大きな問題となるので、他の手段を使って自動化するというのが主流となっています。
次回は、制御の種類について考えてみましょう。こちらからご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.21
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途に適した最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から『6.真空排出』について解説します。
◆真空時のドレン排出には、プレッシャーポンプが有効
真空下で動作している蒸気管からのドレン除去は難しい場合が多いと思います。スチームトラップを使用する場合は、オリフィス両端に一定の差圧を確保してドレンを放出するため、蒸気管内ではなく、より大きな真空源に出口を接続しなければなりません。このような接続が行なえない場合には、圧力駆動式のポンプを用いてプラントからドレンを排出することができます。
立ち上がりがほとんど、あるいは全く存在しないポンプ出口には、ソフトシートの逆止弁を推奨します。また、ポンプよりも下の箇所に排出する場合には、エアブレーキがアンチサイフォン装置として機能します。ポンプより下に排出する場合は大気圧を駆動力として使用することができますが(右図)、ポンプよりも下のループシールに出口用の逆止弁を配置させることにより、(逆止弁の種類に応じた)最小限の開放水頭とウォーターシール確保しなければなりません。
真空のガスシステムからドレンを排出するポンプの場合には、圧縮空気や不活性ガスを駆動力として用いることにより、ポンプを駆動することができます。
スパイラックス・サーコのプレッシャーポンプの詳細はこちらからご覧ください。
次回は『7.ストール』について解説します。
前回の『5.ディフューザー』はこちらから
蒸気に関するWebマガジン No.20
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途に適した最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から
『5.ディフューザー』について解説します。
◆危険性の回避および騒音予防
管末端から解放で大気中にドレンを排出するスチームトラップでは、高温のドレンの排出を視覚的に確認することができます。トラップの前にはドレン圧力と相対的に一定量のフラッシュ蒸気が存在します。これは通行者にとって危険源になる可能性があります。
放出の激しさを軽減することで危険を最小限にすることができます。配管の末端にシンプルなディフューザーを設置すれば、排出の激しさと、騒音を軽減することができます。一般的には騒音レベルを最高で80%を低減できます。
スパイラックス・サーコのディフューザーの詳細はこちらからごらんください。
次回は『6.真空排出』について解説します。
前回の『4.グループトラッピング』はこちら
蒸気に関するWebマガジン No.19
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途にてきした最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から
『4.グループトラッピング』について解説します。
◆グループトラッピングとは
グループトラッピングとは、1台のトラップで一つ以上のアプリケーションに機能させることです。下の二つの異なる蒸気圧で動作する2つのバッチプロセス(ジャケット釜)のイラストをご覧ください。この例では、それぞれのプロセスからのドレンラインが一つのスチームトラップに接続されています。ジャケット釜Bでは圧力が高く、この容器のドレンは排出されるが、逆止弁Cが閉じたままになるため、ジャケット釜Aからのドレン排出が抑制されます。ジャケット釜Aのラインでは、ドレンが滞留し、性能が著しく低下してしまいます。
このような例から、異なる圧力で動作する機器のグループトラッピングは適正な方法とは言えません。では、機器の動作圧力が同じ場合はどうなるでしょう。
上のイラストをご覧ください。ジャケット釜Aの内容物はほぼ動作温度に達しており、蒸気はほとんど凝縮していません。一方ジャケット釜B,C,Dは低温の製品を充填したばかりであり、蒸気を流すと凝縮率がジャケット釜Aよりはるかに高くなります。結果的に、これらの供給管では蒸気の速度がかなり上昇し、それぞれの分岐ラインに沿って大きな圧力降下がおきます。(B,C,DではAよりも凝縮率が高いことから)ジャケット釜B,C,Dの入口やそれぞれの蒸気ジャケット内では蒸気の圧力がより低いため、加熱能力が低下し、生産時間が長くなってしまうことがあります。
このようなことから、ジャケット釜B,C,Dでは排出口の圧力もジャケット釜Aより低くなります。ジャケット釜Aから排出されたドレンは圧力を平準化しようとして、他のジャケット釜から出たドレンと逆流することになります。異なる圧力における異なる容器の排出ポイントを一つのトラップに接続すると、最も圧力の高い容器(この場合A)が他の容器からの流れを阻害してしまいます。すなわち、最もドレンを排出しなければならない容器(B,C,D)のドレンが滞留しやすくなってしまいます。したがって上図の配置は適正なものとは言えないことになります。グループトラッピングしたプロセスに個々に温度制御が装備されていると、状況はさらに悪化する可能性があります。
◆なぜグループトラッピングをしているの?
以前はスチームトラップの種類が少なかったため、またかなり大型で値段も高かったため、グループトラッピングを行っていました。現在は、スチームトラップは小型化し、費用対効果も高くなりました。グループ単位で行うよりも、個々の装置毎にトラップを設置することが望ましいと言えます。
次回は『5.ディフューザー』について解説します。
前回の『3.蒸気障害』はこちらから。
蒸気に関するWebマガジン No.18
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*。
しかし、特定の用途にてきした最良のトラップを選ぶことが必要です。
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題の中から
『3.蒸気障害』について解説します。
◆蒸気障害という現象
蒸気障害は、スチームトラップを排出対象の設備から離れた箇所に設置する場合に必ず起こりうる現象です。サイフォン管や封管からドレンを除去する場合は、特に深刻になる恐れがあります。
上図はサイフォン管を用いた回転型乾燥シリンダーにおける蒸気障害トラブルです。
①十分な蒸気圧によってドレンがサイフォン管に吸い上げられ、スチームトラップを通って排出されます。
②シリンダーの底にあるドレン液位がサイフォン管の末端よりも下になるとどうなるかを示したものです。蒸気がサイフォン管に入り込み、スチームトラップ(このケースではフロート式)が閉じています。
③トラップは一時的に「蒸気によってロックされた」状態になります。シリンダーからの熱損失によって生成されるドレンが増え、結果的にトラップに到達することができません。
シリンダーに徐々にドレンが滞留し、シリンダーの乾燥率が低下してシリンダーを回転させるのに要する出力が増大します。極端なケースでは、シリンダーが中央線までドレンで満水になり、機械的な過負荷によって破損が起こることがあります。
◆蒸気障害を解消するには
スチームロック状態を解消するためにトラップの蒸気を排出する必要があります。
そのためには、トラップに蒸気障害解消弁が必要になります。これは内蔵のニードルバルブで、サイフォン管の内部にロックされた蒸気をメインバルブから排出させることができます。
◆蒸気障害を解消する最適なトラップは
フロート式スチームトラップはこの蒸気障害解消機構を持つ唯一のトラップです。乾燥シリンダーのような回転型の機械類では、適切な選択肢になります。ニードルバルブは上記の損失を回避できる分だけ開くため、空気抜きの容量は限られています。この種のトラップには、エアベントと蒸気障害解消弁の組み合わせが装備されていることが多いといえます。手動操作式の蒸気障害解消機構は、自動式エアベントの作動とは関係なく作動します。
その他の種類のトラップでも、発生後に開くことによって、最終的にはスチームロックを解消することができます。しかしながら、排出や設備の稼働性能にはむらが生じます。バッチ時間や品質、効率が大きな重要性を持つプロセス設備のユーザーにとっては、蒸気障害解消機構がついたフロート式が最適であると言えるでしょう。
次回は『4.グループ・トラッピング』について解説します。
前回の『2.汚れ・ストレーナ』はこちらから。
蒸気に関するWebマガジン No.17
どんな種類のスチームトラップでも、システムに取り付けることは可能です*が、特定の用途に適した最良のトラップを選ぶことが必要です。(*その運転条件がトラップの圧力範囲とドレン排出能力の中に納まることを条件とする)
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要な問題のうち、『2.汚れ、ストレーナ』について解説します。
・
◆配管内には蒸気とドレン以外の物が存在します。
蒸気は凝縮してドレンになりますが、時にボイラ給水の処理化合物による微量の生成物や、水中に含まれる天然鉱物を含有している可能性があります。また、設置時に発生する配管ゴミや腐食生成物についても考慮する必要があります。
◆では、どのスチームトラップが最適?
スパイラックス・サーコでお勧めしているのが温調式のバランスプレッシャー式トラップです。間欠的なブラスト動作で汚れにもっとも左右されにくいと言えます。
同じ温調式でもバイメタル式はトラップの構造上動作不良を起こしやすく、閉塞を起こすことがあります。
機械式のフロート式トラップは汚れに耐性があると言えます。比較的大きなオリフィスを低流速で通過するため、ドレン中に沈殿する汚れがトラップを通り抜けて排出されることがあります。
同じ機械式でもバケット式トラップは、バケット内のエアベント穴が汚れで塞がれるとトラップが空気障害をおこし反応が遅くなる恐れがあります。
◆そもそも汚れを取り除くには?
ストレーナの設置です。ストレーナについては、「ストレーナとは」で解説しています。
どのタイプを選択するかはシンプルです。
-システムの最高圧力に合わせてストレーナの素材を選定します。
-保護の度合いに応じてフィルタースクリーンを検討します。フィルターが細かいほど洗浄の頻度が増します。
設置コスト削減目的でストレーナを最小限にしているシステムもありますが、システム/機器の不調によるメンテナンスを考えると、はるかに低コストでメンテナンス費用削減につながります。
スパイラックス・サーコのストレーナの詳細についてはこちらからご覧ください。
次回は『3.蒸気障害』について解説します。
スチームトラップの選定時に考慮すべきポイント#01ウォーターハンマー』はこちらから。
蒸気に関するWebマガジン No.16
スチームトラップの選定時に考慮すべきポイント
今回はスチームトラップを選定する際に考えるべきいくつかの重要なポイントは7つあります。
1.ウォーターハンマー
2.汚れ、ストレーナ
3.蒸気障害
4.グループトラッピング
5.ディフューザー
6.真空排出
7.ストール
今回はこの中から『ウォーターハンマー』について解説していきます。
◆ウォーターハンマーの可能性がある場合には
ウォーターハンマーについては、別ページで解説しています。詳しくは『蒸気配管の困った現象#01 ウォーターハンマーとは』をご覧ください。
ウォーターハンマーは次にあげるいくつかの要因によって、引き起こされることがあります。
-配管内の高速蒸気流路からドレンが除去されていない。
-アプリケーションに置いて温度制御が行われていたり、ドレンの回収ラインに立ち上がりがある。あるいはドレンを加圧システムに回収しなければならない。
-冠水、もしくはフラッシュ蒸気の絞り効果による過圧状態のいずれかにより、ドレンが過小サイズの回収ラインに流入できない、もしくはこれらのラインを流れることができない。
ウォーターハンマーの可能性がある場合には常にかなり丈夫なスチームトラップ、例えばディスク式またはバケット式を取り付けることをお勧めしています。
しかし、現在のスチームトラップは、昔と比べると頑丈で耐用寿命も延び、ウォーターハンマーへの耐性も増しています。既設のシステムにおいて、ウォーターハンマーが原因でスチームトラップが継続的に壊れるようであれば、それは恐らくスチームトラップではなく、システムのレイアウト不具合である可能性が高いと考えられます。
この場合の解決策は、十分な調査を実施し、システムの欠点を是正することによって真の問題原因を解消する必要があります。
次回は『2.汚れ、ストレーナ』について解説します。
◆人命にも関わることがある、ウォーターハンマー
お盆休み等の工場休止後や新設ラインの始動時など、弁を開けるとカンカン高い音がすることがあります。この正体をご存知ですか?
このカンカン音がなる正体によって、海外では過去に死亡事故も起きています。
◆ウォーターハンマーとは
蒸気がボイラを出るとすぐ、熱を失い始め配管内で凝結が始まります。これは装置が冷えている始動時に特に多くなります。下記の図はドレンの水滴が配管内でどのように形成されるかを示しており、時にドレンの「かたまり」が形成されます。配管に沿って蒸気速度の高速で運ばれていく可能性があります。
この「かたまり」が配管の曲がった部分や分岐などによって妨げられると、運動エネルギーは圧力エネルギーに急に転換され、量が異物に圧力による衝撃が加えられることになります。
ドレンの「かたまり」と障害物の衝撃によっておこる騒音と振動が、ウォーターハンマーと呼ばれます。
ウォーターハンマーは配管補器類の寿命を著しく縮めてしまう可能性があります。重度なケースだと、ほぼ爆発性の衝撃で継手に割れが生じることがあり、結果的に破損個所では生蒸気が損失し、人体に危険な状況が発生する場合があります。
ドレンは低い箇所に集まるため、ドレンの「かたまり」が蒸気流によって捕獲され、下流のバルブや配管継ぎ手に勢いよくぶつかる場合がある。このような低い箇所には、不適切な配管支持や、本管がたるんだ部分が含まれます。また、考えられるウォーターハンマーのその他の発生源には、同芯レデューサーの使用やストレーナの誤った設置方向の他、蒸気配管の立ち上げ箇所の手間位における不十分なドレン排水などが挙げられます。
ウォーターハンマーを起こさないようにするためには、配管内のドレンを素早く除去する必要があります。
1.ドレンが溜まらない配管設計・施工
2.スチームトラップの選定
3.始動時に弁をゆっくりとあける
等の対策が有効です。
次回は『蒸気配管の困った現象#02ストールとは」です。
蒸気に関するWebマガジン No.14
◆キャリーオーバーはボイラのせい?
いいえ、前回『蒸気質の低下原因#01』や動画を見ていただいた方はわかると思いますが、キャリーオーバーはボイラの性能よりも、運転管理に起因することが多いと考えられます。
もちろん、ボイラの水位制御やブローダウン制御が正しく行われることは必須条件です。特に、バッチプロセスが多い設備では、プロセスのスタート時に最大負荷となり、プロセスの最終で最小負荷となるように蒸気が消費されます。
装置の蒸気消費量は時間当たりの平均蒸気負荷で算出されるので、スタート時の最大負荷は蒸気設計に反映されず、ボイラの瞬間的な圧力低下をもたらす要因となります。
また、電磁弁による制御はON になれば、バルブのKv値(Cv値)と前後の差圧から演算される最大流量が流れ、プロセスのスタート・終盤にかかわらず、ボイラ圧力の低下原因となります。
◆運転管理側からできる、キャリーオーバー防止策
運転管理側からできるキャリー・オーバー防止策として、次のような対策があります。
・ 朝の始動時はボイラ圧力が所定の運転圧力まで上昇したのを確認の上、ヘッダーのバルブをゆっくり開けて、ウォーターハンマーと、キャリー・オーバーの発生を防止する!
・ バッチプロセスが多い場合は、スタート時間をずらす等の時間管理を行い、急激な負荷増加が重ならないよう配慮する!
・ ON/OFF 制御を比例制御に変更し、スタートアップ時以外に最大負荷とならない仕組みを構築する!
・ 遮断弁を含め適正なバルブの口径選定により、不必要に過大な蒸気量が流れないよう、蒸気設計の最適化を図る!
このようにボイラの「蒸気質」を決めるのは、ボイラの性能だけでは無く、蒸気の使い方にも起因するということです。
『製品の品質と蒸気の純度』もぜひご覧ください。
次回は『スチームトラップの選定』について解説します。こちらからご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.13
◆蒸気質の低下原因
蒸気の質(乾き度)を高く維持するための5ポイントを『蒸気の乾き度』の回で解説しました。
その中の『ボイラ圧力を高く維持し、キャリーオーバーを制限する』ことによる蒸気質の低下抑制について詳しく解説していきます。
◆ボイラ圧力を高く維持し、キャリーオーバーを制限する
省エネボイラには「高効率」であることと同時に「高品質」の蒸気を発生させることが要求されます。国内で主流の貫流ボイラのボイラ効率は98% まで高められており、極めて完成された熱交換器であることが判ります。ですが、どのような高効率ボイラでも、急激な負荷増加に伴う圧力低下は避けられず、この圧力低下がキャリーオーバーの要因となります。圧力が低下した時に、ボイラ内部で何が起こっているかを考えてみましょう。
ボイラ内部の圧力低下により、蒸気の基本特性から次の事が起こります。
a) 蒸気の飽和温度が下がり、ボイラ内の缶水の自己蒸発(フラッシュ)により蒸気発生量が増加する。
b) 蒸気の比体積が増加し、缶水内で発生する蒸気泡が大きくなり、水位の上昇を促進する。
c) この水位上昇と比体積増加により、ボイラ出口の蒸気流速が加速され、上昇した水面の水滴を蒸気が運んでいくこととなる。
このボイラ出口から水滴が蒸気とともに運ばれる現象を『キャリーオーバー』といいます。
これらの事は、貫流ボイラよりも保有水量の多い炉筒煙缶ボイラでも、発生することが判っており、ボイラ内部で竜巻のように水面の缶水が蒸気出口に向かって吸い込まれていく様子を紹介しています。
◆では実際にボイラの中では何が起こっているのか見てみましょう
見られない方は、下記リンクよりYoutubeに飛んでください。
https://youtu.be/Eupxbs5ue9U
◆『蒸気質の低下原因#02』では
運転管理側からできるキャリーオーバー防止策について解説します。こちらからご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.10
流量計測は必要なのか?
"なぜ、蒸気の流量計測をする必要があるの?全体のエネルギーコストは分かっているし、ただのメーターでしょ?"
流量計を使用していないシステムではこのような声が聞こえてきます。
蒸気の流量計測とは、単に流量計を設置して計測するだけではなく、その得られた貴重な情報は、エネルギー管理、プロセスやアプリケーションの効率化や改善、原価計算など、様々な場面でソリューションと共に使用されます。
流量計測をするとどんなことがわかる?
項目
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流量計測の活用例
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使用データ
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行方不明蒸気
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プラントが停止しているのに、数字が出ている。漏れや放熱ロスの確認が急がれます。
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瞬時・積算
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ピークロード
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ピークロードが判明します。ピークロードを分散させることができれば、設備機器の最適化が図れます。
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瞬時
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プロセス制御
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制御目的の流量計測では、通常と違った数値が現れることがあります。機器の異常などを察知することができます。
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瞬時
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プラントの効率化
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設備導入や改善の費用対効果の数値に使用されます。またその結果を、導入前後で比較検証できます。
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瞬時・積算
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エネルギー管理
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全体のエネルギーコスト算出や、製品の原価計算に使用され、エネルギー削減の数値目標として使用されます。
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積算
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これらのことは蒸気流量計測なしではできません。蒸気流量計測は様々な改善につながる価値ある情報をもたらしてくれます。
流量計測#02では、なぜ蒸気の流量計測が難しいのか、蒸気流量計測を行う際に注意しなければいけないポイントについて解説します。こちらからご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.6
スチームトラップって、何?
一度蒸気システムを見たことのある方でしたら必ずスチームトラップを見たことがあることでしょう。蒸気システムにスチームトラップは不可欠ですが、そもそもスチームトラップにはどのような役割があるのでしょう。
蒸気が冷えて(凝縮して)ドレンになると、蒸気配管内や装置内には、蒸気とドレンが混在した状態になります。このドレンを排除するために、最下点に穴をあけておけば、ドレンは排出されますが、蒸気も一緒に出て行くためロスが生じます。
ドレンは排出して蒸気は逃さないための機器、それがスチームトラップです。
◆スチームトラップの役目
①効率的なドレンの排出
→装置内にドレンが溜まると熱伝達面積が減少し効率が悪くなります。またドレンが配管/装置内に滞留するとさまざまな題が出てくるため排出が必要です。
②効率的な空気の排出
→システムの起動時、配管内には空気が溜まっています。空気を排出しなければ、熱伝達が低下し始動に時間がかかります。
③蒸気は可能な限り漏らさない
→ドレンポケットや手動弁でもドレンは排出可能ですが、蒸気が漏れてしまいます。
◆スチームトラップの重要性
スチームトラップは単体として選定されることが多いのですが、システム全体に影響をあたえる重要な機器です。
弁の摩耗や裂傷、漏れ、設備の出力低下などはスチームトラッッピングに正しく注意を払っていれば改善可能であることも多いのです。
スチームトラップは真空から10MPaをゆうに超える圧力まで、広い圧力範囲において稼働することができます。様々な条件に適応するため、多種のトラップが製造されており、それぞれにメリット、デメリットがあります。どんな条件下にも万能なスチームトラップはありません。すなわち、正しいトラップを選定する必要があるということです。
ではスチームトラップにはどのような種類があるか詳しく見ていきましょう。
https://spiraxsarco.co.jp/blog/mt/blog/2017/07/-3------.html
正しいトラップを選定するには、どのような選定が必要なのかはこちらから。
https://spiraxsarco.co.jp/blog/mt/blog/2017/09/01-3.html