蒸気に関するWebマガジン No.49
液体や圧搾空気などでは正確に計測できる流量計で蒸気流量を計測すると、途端に精度が低下するケース見受けられます。このことを理解するには流量計の作動原理だけではなく、配管内の蒸気の流れ状態を正しく理解する必要があります。
◆蒸気の流れ状態
蒸気はボイラから発生して蒸気主管に入ります。最初、配管は冷たく蒸気の熱が配管へと伝わり直ちに凝縮し始めます。 運転開始時には、配管を加熱するために蒸気のエネルギーが使われますので、生じるドレン量は最大になります。配管が加熱された後も配管からの放熱があるため蒸気の凝縮は起こります。したがって配管中を流れる蒸気は気体(蒸気)と液体(ドレン)からなる気液2相の流れとなるのです。その気体と液体の度合いによって、当社では下図のように4種の流れ状態に別けています。
(1) 「塊状流」は、ドレンの発生量が多く蒸気の流速に押されて塊になっています。丁度、風が強いときに水面に波打つ 現象と同じです。この場合、この塊が蒸気流速と同じ速さになるためウォーターハンマーを引き起こし、強い衝撃波を生じます。これにより配管上の流量計や各種センサー、バルブ類に大きな損傷をもたらします。
(2) 「環状流」は、管壁の環状の水膜と中心部の蒸気の部分からなります。管壁の水膜はスパイラル状に回転しながら流れ、この回転による遠心力で管壁に付着しているものと考えられます。
(3)「環状散乱流」は、湿り飽和蒸気の代表的な流れです。環状流に似ていますが気相に浮遊する水滴状態の水分も含まれています。
(4)「散乱流」は水分が浮遊する水滴状態の流れで乾き度の高い蒸気の流れです。
◆汽水分離器(セパレータ)の役割
実際の蒸気計測において流量計を通過する蒸気は乾き飽和蒸気ではなく湿り蒸気の場合がほとんどです。下に汽水分離器の作動原理を示します。汽水分離器は配管壁を流れるドレンと蒸気流速に近いスピードで飛んでいる霧状の水分との両方を除去し、乾き度を向上させる機能です。よって、蒸気流量計の上流側に設置し、乾き度を一定に保つことにより、計測精度を向上させるためには必須の機器といえます。
スパイラックス・サーコのセパレータはこちらのページ で確認できます。
次回は過熱蒸気は使えない? です。
蒸気に関するWebマガジン No.48
省エネには計測、つまり「見える化」が必須
蒸気の見える化に使われているのは「蒸気流量計」です。しかし、使用されているユーザーの方々からは
・蒸気流量計は精度が悪く役に立たない! ・蒸気流量計の蒸気量とボイラの給水量が合わない! ・蒸気流量計は目安にしかならないのに高すぎる! ・蒸気が流れているのに計測しない! 等の厳しいご意見を頂くこともあるのです。 皆さんは心当たりはありますか?
実は、これらは単に蒸気流量計の精度や計測原理の問題だけではないのです。蒸気の基本性質を十分に配慮した施工やシステムが構築されているかどうかによって、精度に大きな差異が生じることに起因しているのです。
◆正確な蒸気流量計測に必要な機能
ここからは専門的な解説になります。 蒸気流量を正確に計測するには、何が必要でしょうか。それは蒸気の負荷変動を最大流量から最小流量まで捕捉することです。そのためには蒸気流量計の必須項目として下記の機能が言えます。 ① 低流速でも計測できる十分な感度をもつこと ② 計測範囲において高い精度を維持すること ③ レンジアビリティが広いこと ④ リアルタイムで比容積補正をおこなうこと ⑤ 蒸気の乾き度による流量補正を行うこと など、ハードはもちろんのこと、ソフト的な機能を必要としています。これらのいずれが欠けても蒸気流量を正確には計測することはできないのです。
① 優れた低流速計測性能
蒸気流量計には種類があるが、「可変オリフィス式蒸気流量計」は優れた低流速計測能力を持った製品です。 ここで可変オリフィス式と渦式の低流速域における計測性能の比較を見てみましょう。図1の条件下では、渦式流量計の計測限界はおよそ2.8m/sです。これらの差は、可変オリフィス式が可動コーンをもつことにより最適な位置で差圧を計測する方式であるのに対して、渦式流量計の場合はカルマン渦による流速換算のベースとなるストローハル数と呼ばれる常数が低流速域では一定でなくなってくることによるものと考えられます。
② レンジアビリティと測定誤差
「レンジアビリティ」は流量計の性能を表す代表的な尺度です。なぜなら、測定誤差と密接に絡んでいるからです。 図2をご覧ください。このグラフは、蒸気システムのスタートアップ時には蒸気量が最大になり、定常運転に入ってからは装置側の負荷に応じて変化する、という経過を示したものです。従って蒸気流量計はこれらの最大値から最小値までの大きな変化を計測しなければなりません。例えば可変オリフィス式を最大流量時に1,000kg/hのラインに使用したと考えると、レンジアビリティは100:1のため下限の最小計測値は10kg/hとなります。一方このラインにオリフィス式流量計を用いたとすると、レンジアビリティが4:1のため最小計測値が250kg/hとなり、この値以下のデータは全て0kg/hと見なされ、時間経過と共に測定誤差として累積されてしまうのです。
③ 各種流量計のレンジアビリティ比較
各種流量計のレンジアビリティの比較を図3にまとめました。この図では蒸気流速を代表的な実用流速である35m/s時を基準にして比較しています。この場合、渦式流量計はレンジアビリティが12:1程度です。
次回は配管内の蒸気の流れ状態を正しく理解するために蒸気の流れ状態と汽水分離機(セパレータ)について 解説します。
First for steam solutions
スパイラックス・サーコのスチームソリューション
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蒸気に関するWebマガジン No.47
蒸射殺菌工程で、製品に触れた蒸気が大気に放出されている排気
今回は、大気中に放出されている排気の中でも『蒸し や殺菌 工程で製品に触れた蒸気』の熱回収について紹介します。 大気に蒸射した蒸気(生蒸気)を使って『蒸し』『殺菌』『加温』する装置は、多くの産業で利用されています。例えば、「連続式スチーマー(殺菌装置)」や「バッチ式蒸箱(殺菌庫)」等、業界毎に様々な名称で呼ばれています。
ただし、これらの装置から多量の排気が大気中に放出されると、エネルギー損失と環境的見地から問題アリなのです。 ですが、これらの排熱回収は手を付けることが難しかった事も事実です。こんな問題が立ち塞がっていました。
「蒸し器」と云われる装置が日本や中国等のアジア圏に圧倒的に多いのは、皆も想像がつくと思います。つまり、この熱回収技術はアジアに住む我々で開発する必要がありました。スパイラックス・サーコジャパンでは、排気量の定量化や排気温度の測定等を実施した 上で、この無圧排蒸気の回収に取り組んできています。今回は、その実施例を紹介します。
また、更なる省エネとして、排熱の再利用についても触れておきます。
スチーマー等では生蒸気を使用するから、ボイラに回収するドレンはありません。ドレンの再利用ができないということは、多くの工場では、ボイラ給水温度は常温のままということになります。 そこで、この排熱でボイラ給水を加温することができれば、6℃毎に約1% とボイラの燃料費を節減することができるぞ。一般的には80℃まで加温が望めるので、約10%の省エネが実現できる可能性があります。つまり、無圧排蒸気を回収することで、工場からの排気を減少させると同時に10%の省エネを実現できる可能性があります! もちろん、スチーマーの近くに温水タンクがあり、十分排熱量を消費するだけの温水量があれば、ボイラ給水を加温する必要はありません。 前回も触れておるが、排蒸気からは約10 倍の温水が製造できます。だから効率的に排熱回収をしたいとなれば、慎重にヒートバランスを検討しなければいけません。 スパイラックス・サーコでは、効率的な無圧排蒸気の回収を、下記のお手伝いをさせていただきながら、ご提案しております。
ベントコンデンサー 回収できる廃蒸気のページはこちら からご覧ください。
次回は蒸気の見える化の落とし穴 第1回 です。
蒸気に関するWebマガジン No.46
廃蒸気の効率利用
今回のテーマとなっている無圧廃蒸気は、大きく分けると次の2 つに分類されます。
1. 無圧の状態で大気に放出されている蒸気 2. 蒸射殺菌工程で、製品に触れた蒸気が大気に放出されている排気
今回は、まず『無圧の状態で大気に放出されている蒸気 』すなわち、汚染されていない廃蒸気の回収事例から、考えてみることにしましょう。 ここでは、『無圧フラッシュ蒸気 』と呼ぶことにします。 無圧フラッシュ蒸気は、蒸気の質の点においてボイラ蒸気と何ら変わりません。温水を製造し利用する事で、廃エネルギーを有効利用する事ができるのです。 但し、この廃熱回収を実現するには、無圧の廃蒸気を熱媒体とした高効率の熱交換器が必要になります。それが、シェル&プレート型熱交換器のベントコンデンサーです。
もっとも簡単に見分ける例では、ドレンタンクやボイラ給水タンクの排気筒から白い蒸気(無圧フラッシュ蒸気) がもくもくと出ていれば、回収の対象と考えられます。 後は、この無圧フラッシュ量の定量化と温水の使用先を考えることが、実際に必要なアクションになるのです。
ベントコンデンサーには廃蒸気量に応じて3つの容量があり、それぞれ250 kg/h, 500 kg/h, 1000 kg/h となっています。
一番小さなタイプでも時間当たり約2 ton/h の温水を製造する能力があります。プレート部の材質はSUS316L なので、水だけではなく、製品の予熱としても利用できるので、最適な廃熱回収の方法を検討することができる機器です。
ベントコンデンサーの詳細につきましては、担当営業にご連絡いただくか、Infojp@spiraxsarco.com までお問い合わせください。
次回は、『 蒸射殺菌工程で、製品に触れた蒸気が大気に放出されている排気』について解説いたします。
無圧廃蒸気の効率利用 第2回
蒸気に関するWebマガジン No.45
フラッシュ蒸気 第1回をお読みでない方はぜひこちら からお読みください。
フラッシュ蒸気 第2回 発生のメカニズムと蒸気量はこちら から。
有圧で利用できるフラッシュ蒸気と無圧で利用できるフラッシュ蒸気
フラッシュ蒸気は、有圧と無圧状態での2種類の利用方法があります。
今回はフラッシュ蒸気を有圧状態で活用する方法です。 無圧状態で活用するフラッシュ蒸気については次回説明します。
ボイラの元圧(や高圧)で使用している装置から発生するフラッシュ蒸気は、有圧状態で活用できます。
この装置として代表的なのが
・フライヤー 、乾燥機 等です。
フライヤーの場合
例えば、フライヤーで使用されている蒸気は高圧の為、使用後のドレンにも再利用するのに十分な熱量が残っています。
回収しているドレンが高温なため、 ドレン回収タンクが沸騰してしまう。 タンクから湯気が出ている状態=熱を捨てている。
そこで、フラッシュタンクを使用すると、下図のように効率的に利用することができます。
ドレン回収の途中にフラッシュタンクを設置。 回収したドレンから有圧フラッシュ蒸気を取り出し、低圧装置で利用。 ドレン回収タンクからの湯気が減少。
ケーススタディがございます。詳しくはこちら をご覧ください。
乾燥機の場合
例えば、乾燥機では大量の蒸気を高圧で使用しています。こちらも使用後のドレン再利用するのに十分な熱量が残っています。
乾燥機から回収しているドレンが高温なため、 ドレン回収タンクが沸騰してしまう。 タンクから湯気が出ている状態=熱を捨てている。
そこで、フラッシュタンクを使用すると、下図のように効率的に利用することができます。
ドレン回収の途中にフラッシュタンクを設置。 回収したドレンから有圧のフラッシュ蒸気を取り出し、洗浄機等に利用。ドレン回収タンクからの湯気が減少。
ケーススタディがございます。詳しくはこちら をご覧ください。
★フラッシュタンクの詳細はこちら をご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.44
フラッシュ蒸気 第1回をお読みでない方はぜひこちら からお読みください。
◆フラッシュ蒸気発生のメカニズム
フラッシュ蒸気は、ドレンの圧力が低下した際に一部が再蒸発し発生する蒸気のことです。水の温度が圧力低下後の沸点より高ければ発生します。つまり、20℃の室温の水でも、圧力が十分に下がると沸騰します。フラッシュ蒸気は発生する過程こそ違うものの、蒸気であることには変わりないのです。
通常、ボイラ内で水を加熱し発生させる蒸気を生蒸気といいます。実はボイラ内でもプロセスの負荷が高くなりボイラ内の圧力が低下するとフラッシュ蒸気が発生します。しかし、この場合にはフラッシュ蒸気は通常の生蒸気と合流してプロセスに供給されるので区別は困難です。ですので、ボイラで発生する蒸気については生蒸気と総称し、スチームトラップの二次側のように低い圧力で発生する場合に限りフラッシュ蒸気と呼ばれることが一般的です。このように生蒸気とフラッシュ蒸気を別の名前で呼ぶことから、残念ですが、フラッシュ蒸気は価値の低い蒸気と誤って認識されていることが多いのです。
◆ フラッシュ蒸気量
フラッシュ蒸気の再利用をする上で蒸気の発生量を知る必要があります。蒸気量は計算や表、グラフを利用して簡単に求めることができます。
熱交換器で0.7MPagの蒸気を250kg/h消費する例で計算してみます。
この場合だと、スチームトラップの一次側には0.7MPagの飽和水として到達し、二次側が大気圧下として排出されます。熱エネルギーに着目すると、一次側では飽和水のエンタルピーのみを保有している状態です。一方、大気圧下になった飽和水は熱エネルギーが余っているため(721.4kJ/kg >419kJ/kg)に、差分の熱エネルギーが一部飽和水に与えられて再蒸発します。この与えられた熱エネルギーは蒸発のエンタルピー(気化熱)と呼ばれます。このフラッシュ蒸気の発生率を計算式に表すと下記の通りになります。
発生量はグラフでも求めることができます。
飽和水は250kg/hなのでフラッシュ蒸気の発生率を掛けるとフラッシュ蒸気量が求められます。
フラッシュ蒸気量=ドレン量xフラッシュ蒸気発生量
フラッシュ蒸気量=250 x 0.134 =33.5
つまり250kg/hのドレンから33.5kg/hのフラッシュ蒸気が発生し ます。
従って、高温ドレンから発生するフラッシュ蒸気をどうすれば有効に利用できるかを検討すべきです。せっかくボイラ室まで戻しても、ボイラ給水タンク(ドレンタンク)の排気管から大気に放出しているケースを多々見受けられますので、何らかの対策が必要となるケースが多くあります。
次回は、これらフラッシュ蒸気の効率利用 についてです!
プレッシャーポンプ点検・メンテナンス・サービスのご案内
高温ドレンの回収、またドレン滞留の解消のために、多くのお客様にご使用いただいているスパイラックス・サーコのプレッシャーポンプ。しかし、稼動しつづける各部部品の磨耗・劣化は進行していきます。
突然、ドレンを移送することができなくなった... そのようなトラブルを防ぐために
スパイラックス・サーコではプレッシャーポンプの点検・メンテナンスサービスを実施しております。
メンテナンス内容
① 内部点検&部品交換:弊社サービスエンジニアが各部の状態を確認し、消耗部品(給排気弁セット、スプリング・セット)および交換が必要と判断されたその他の部品の交換作業を行います。状態によってはカバー・アセンブリ(カバー+内部部品一式)交換となる場合があります。
② クリーニング:各部部品に付着した汚れを落とします。
③ 補器類点検&交換:ドレン逆流を防ぐ逆止弁、汚れの進入を抑制するストレーナースクリーン等の、プレッシャーポンプ・システム補器の点検・交換を行います。 ※他社製品は点検をお断りしております。
④ 作動確認:作業終了後、正常に作動するかどうかの確認を行います。
主な部品の交換周期目安
※1 以下の作業はお客様にてご実施願います。 (詳細はお見積もり段階でご連絡致します): ● 当該ポンプを接続している設備の停止 ● お客様設備のバルブの開閉作業 ● 安全な作業スペース/環境の確保 ● お客様の配管からの当該品の脱着とそれに伴うガスケット類のご用意 (配管施工状態等により、弊社での脱着が困難と判断される場合)
※2 カバー・アセンブリの点検・メンテナンスに関しては、弊社にお送りいただき、オーバーホール後ご返却するサービスも行っております。
※3 上記交換周期は目安であり、作動頻度や設置環境などによっては、交換すべきと判断される時期は変化します。
※4 スチームトラップ、エアベントバルブ、減圧弁なども設置の有無やご使用状況に応じてメンテナンスや交換が必要となります。
※5 部品費用の他、出張作業費用が別途かかります。
ぜひ、スパイラックス・サーコにご連絡ください。事前打ち合わせをもとにお見積書を作成いたします。
プレッシャーポンプの内部構造、駆動原理はこちらの動画でご確認いただけます。
VIDEO
こちらの内容のチラシをご用意しております。
こちらからダウンロードできます。
プレッシャーポンプメンテナンスのご案内_JPL-13-004 ssue3 sxsp.pdf
蒸気に関するWebマガジン No.43
工場の煙突や配管の先から、「もやもやしたもの」が立ち上がっています。 いつも見慣れている光景ですが、実は、同じ"もやもや"でも、「煙」と「湯気」は違います。 今回は、タンクの大気解放管や、スチームトラップの出口から出ている「白い湯気」についてのお話です。もしかしたら、再利用する価値のある資源かもしれませんよ。
「白い湯気」の正体は、「フラッシュ蒸気」?
高圧状態にある水が、より低圧下に降下すると、熱を加えなくても再度、蒸発する現象があります(再蒸発)。その再蒸発蒸気の事をフラッシュ蒸気 と呼んでいます。例えば、高圧下にあるドレンが、大気圧に降下(開放)すると、ある一定の割合で、フラッシュ蒸気が発生し、その一部が凝縮の過程で「白い湯気」となって目視できるようになるのです。つまり、「白い湯気」は、フラッシュ蒸気によるものとも言えます。
「 フラッシュ蒸気」は分かったけど、それがどうしたの?
フラッシュ蒸気と言うと、何やら、ボイラーから発生する飽和蒸気と違う様に思えるかもしれません。しかし、それらは全く同じ物性を有した蒸気であり、他の蒸気設備で使用することが可能です。
でもその フラッシュ蒸気を、他の蒸気設備で再利用して何かいいことあるの?
タンクの大気解放管や、スチームトラップの出口から出ているフラッシュ蒸気は、大気中に"捨てている"状態です。もし、この捨てている蒸気を他の蒸気設備で再利用できれば、その分、ボイラーで発生させる蒸気量を減らせることになり、減らした分、省エネに繋がるのです。
なるほど。でも、再利用するほどメリットってあるのですか?
適切な再利用先があることと、どれだけ" 捨てている" のかを、お客様毎に調べる必要がありますが、設備によっては10% 以上のエネルギーを捨てていることがあります。
0.7MPag、100kg/h の蒸気を利用する機器(熱交換器)の理論値で見てみましょう。
この場合は、スチームトラップから排出されるエネルギーは、全体の26%で、フラッシュ蒸気には、11% のエネルギーが使用され、13kg/h(0 MPag)の蒸気量を発生させます。これは、経済面、環境面を考えても再利用するに値する価値あるものと思えませんか?
え!そんなに?
フラッシュ蒸気の再利用の可能性を感じて頂けましたでしょうか?お客様に合わせたご提案をさせて頂きますので、詳しくはお近くのスパイラックス・サーコのエンジニアまでご相談ください。
次回のブログでフラッシュ蒸気の発生のメカニズム、発生蒸気量について詳しく解説します。
+α 湯気と煙の違い
湯気は気化した水分が水滴として析出し白く見えるものです。湯気の成分は水滴= H2O です。温泉や火山の上に見えている白い靄はほぼ湯気です。 黒や灰色の煙は、有機物を燃焼した際に不完全燃焼であると発生するものです。その際に煙に含まれる成分は、炭素が多くを占めますが、燃やす有機物によります。多くの場合、水蒸気も含まれます。例えば、バーベキューで使用する炭は、煙が出ません。これは既に有機物が炭化しているためです。
次回はフラッシュ蒸気の発生のメカニズムと蒸気量について 解説します!
ドレン回収 についてはこちらで解説しています。
蒸気に関するWebマガジン No.33
◆どっちがお得?
最近「減圧弁よりも蒸気タービン等で発電しながら減圧した方が得である」という意見を耳にします。
確かに減圧弁による減圧と同じ量・質の低圧蒸気が得られ発電もできるなら間違いなく得でしょう。
しかしエネルギー保存の法則をご存知でしょうか?これは熱力学第一法則とも呼ばれエネルギーを別のエネルギーに変換した場合でもそのエネルギー総量は変化しないという物理学における基本的な法則の一つです。
つまり減圧前の蒸気が保有しているエネルギーと減圧後のエネルギーは等価であることを意味します。
減圧弁の場合、絞り断熱膨張と呼ばれ減圧により飽和温度が下がってもドレンを再蒸発させて乾き度が向上することにより等価を保ちます。(乾き飽和蒸気の場合は、過熱蒸気に変化します)これは減圧効果と呼ばれ、減圧された蒸気は乾き度の高い蒸気に変化しエネルギー損失が無いことを意味します。
一方タービン等による減圧は、蒸気エネルギーでタービンを廻し電気を取り出している訳ですからその分減圧後の蒸気の保有しているエンタルピーは減少します。つまりタービンから取り出せるのは減圧された湿り蒸気で、エンタルピーは減少しているのです。
例えば減圧弁により乾き度が100%の飽和蒸気とタービン後の乾き度80%の湿り蒸気、ともに圧力0.2MPaGで取りだし、熱交換器に供給する場合タービン後の蒸気の方が25%多く蒸気を供給しないと同じ仕事ができないことを意味します。
結果的に、発電に消費した分、ボイラで蒸気を多く発生させ、プラントに供給しないといけなくなるのです。
次回は『製品の品質と蒸気の純度』です。こちら からご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.32
制御のお話 第八回
前回は『制御対象と目的 』でした。
コントローラー
今までお話ししてきた制御、その主役が「コントローラー」と言えます。
温度制御であれば、目的の温度を設定し、今の温度はどうなっているかを確認するのも、このコントローラーで行うことになります。
センサーの状態及びアクチュエーターの動きを確認することは稀ですが、コントローラーが制御している状況は、常に何らかの方法で確認していることが多いです。
例えば、殺菌工程のような場合、必要とされる殺菌温度を維持できているかを、常に監視及び記録することは、殺菌ができていることを保障するための貴重なデータとなります。
左が当社のSX35型と呼んでいるハーフサイズのコントローラー、右がフルサイズのSX36型コントローラーです。両方とも縦寸法が96mm、横寸法がSX35が48mm、SX36が96mmです。
基本的な機能面は同じなので、コンパクトさが重要であればSX35、操作性や表示の見易さを重視するのであればSX36というような選び方をします。
仮に上記のような表示例で、蒸気を使った加熱制御を行っている場合を想定してみましょう。
設定したSP目的温度(50℃) よりも、PV現在温度(20.8℃) の方が低いので、バルブを今の開度よりも更に開けて蒸気をより多く供給するようにするのがコントローラーの動き(役割)になります。逆に冷却制御であれば、目的温度(50℃)より、現在温度(20.8℃)の方が低いので、冷え過ぎを解消するために、冷却用のバルブを閉めることになります。
このように、目的に応じてコントローラーがバルブを開け閉めするという、極めて重要な役割を担っているのです。
また、表示に関していうと、温度センサーの測温抵抗体や熱電対場合には、使用するセンサーの種類と小数点以下を表示する/しないを設定すればOKです。ですが、温度制御以外のトランスミッターを使用する場合は、4~20mA の電流信号になるので、制御対象に応じて表示設定を行うことになります。
例えば、圧力制御でトランスミッターのレンジが 0.00 ~ 1.00MPa の場合には、コントローラーの表示を小数点以下2ケタ表示に設定して、表示レンジを「 0.00 ~ 1.00 」にします。
流量制御であれば、流量計の測定レンジが 0~1,000kg/h であれば、小数点以下を無しにして「 0~1000 」にします。
湿度制御であれば「 0.0~100.0 」%というようにすれば、コントローラーの表示が分かりやすくなります。
最新の装置には、コントローラーではなく、タッチパネルを使用したタイプが多く見られるようになってきました。写真は当社製の温水製造ユニットですが、タッチパネルが採用されています。
このように、制御はどんどん進化を続けているので、これからが楽しみですね。
今回より「制御のお話し」は、おしまいです。
次回は『減圧弁とタービン等による発電後の減圧蒸気の違い』です。ぜひこちら からご覧ください。
蒸気に関するWebマガジン No.31
◆制御のお話し 第七回
前回は電動式アクチュエーター について解説しました。
制御対象と目的
何を制御するかで制御名称が決まります。温度を維持したければ温度制御、圧力なら圧力制御になります。
蒸気及び高温水を対象として、制御種類は大きく分けると以下の5種類が考えられます。
このように、温度センサー制御に使用する温度センサーの信号を除くと、電流信号である4~20mAが主に使用されており、日本ばかりでなく、世界的に見てもこの傾向は同じと言えます。
■温度センサー
蒸気と高温水を温度制御する場合に使用する温度センサーは、「測温抵抗体」と「熱電対」の2つが代表的なものと言えます。
白金(Pt)は0℃の時に、100Ωの抵抗値が得られ、温度が上昇すると、抵抗値も上昇します。
0℃の時には100Ω、160℃の時には161.05Ω、というように世界統一規格になっているので、海外製品でも日本で問題なく使用できます。
異種金属を先端で溶接し、その先端部の温度が0℃の時に 0mV 、温度が上がれば電圧も増加します。
熱電対は使う金属によって特徴が異なり、以下のような種類があります。↑の写真のものは補償導線の色が茶色なので、Tタイプと判別できます。
他の 圧力、水位、湿度、流量のトランスミッターは、検知機構はさまざまですが、形状は似たようなものになりますので、ここでは2種類を紹介します。
圧力トランスミッター 水位トランスミッター
次回は「コントローラー 」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.30
◆制御のお話し 第六回
前回は他力式アクチュエーター についてのお話しでした。
電動式アクチュエーター
電動モーターを動力源として使用し、モーターの横回転をギヤを使って上下動に変えて、バルブを開けたり閉めたりします。 ※上下動でバルブを開閉する点は、空圧式 と一緒です。
下図のように、電源の接続の仕方によって、モーターが右回転または左回転します。そのため、空圧式のように用途によってスプリングの位置を変える等の構造を変える必要がなく、加熱用途/冷却用途共に外観の違いはありません。
これを比例制御 に使用する際には、「ポテンショ・メーター」と「ポジショナー・カード」というものが追加されます。
ポテンショ・メーター バルブの開度を抵抗値の変化によって検知する、ボリュームのような抵抗器
ポジショナー・カード 制御信号がバルブの開度と一致するようにモーターを正転、または逆転させる基板
空圧式と電動式の違いをまとめると、表のようになります。さまざまな要件を検討した上で選択することが重要です。
スパイラックス・サーコの電動式アクチュエータの詳細はこちら をご覧ください。
次は「制御対象と目的 」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.29
◆制御のお話し 第五回
第4回ではアクチュエーター についてお話ししました。
他力式アクチュエーター
バルブを開けたり、閉めたりするのがアクチュエーターであり、前回 は自力式の外部の駆動源を必要としないタイプのお話をしました。
今回は他の動力源を必要とする他力式アクチュエーターのお話しをします。他力式の駆動源は、大きく分けると空気式 と電気式 に分かれます。
空気式アクチュエーター
圧搾空気スペースに空気を供給し、スプリングの力を上回るとダイヤフラム部を持ち上げることになるので、連結されているバルブも開いていきます。空気を抜くと、スプリングの力が掛かっているのでダイヤフラム部が下がってくるので、連結されているバルブも閉じていきます。
この圧搾空気スペースの圧力を調整すれば、バルブを比例的に開けたり閉めたりすることができます。
駆動源の空気がなくなると、スプリングの力によってバルブが必然的に閉まります。
加熱アプリケーションの際には、アクチュエーターに何らかのトラブルがあった際に、バルブを閉める方が安全性が高くなります。
最近は生産性向上よりも、安全性を向上させる方が優先度が高い傾向にあるので、加熱アプリケーションに広く使用されています。
逆に、冷却アプリケーションの場合、アクチュエーターに何らかのトラブルがあった際に、過冷却になったとしてもバルブを開けている方が安全性が高くなります。したがって、スプリングの位置を逆にして、スプリングの力でバルブを開くようにしたのが、冷却用のアクチュエーターです。
外観は同じに見えても、スプリングの位置を変えるだけで、動きが逆になる(できる)ので、歴史も長く、幅広い分野で今でも広く使われています。
そして、バルブ開度を正確にコントロールするためのポジショナという機器が搭載されているのが一般的です。
次回は「電動式アクチュエーター 」についてお話しします。
蒸気に関するWebマガジン No.9
スチームトラップは温調式、機械式、熱力学式の3つに分けられます。
今回はこの中の熱力学式スチームトラップの動作、メリット/デメリットについて解説します。
◆熱力学式スチームトラップ
熱力学式スチームトラップは、トラップを通過する際のフラッシュ蒸気の動的効果によって動作します。
熱力学式スチームトラップには4種類あります。
-ディスク式
-インパルス式
-ラビリンス式
-固定オリフィス式
この中からディスク式スチームトラップについてのみ、解説します。
◆ディスク式
ディスク式の構造は非常に単純で、可動部品はキャップ内部の平面上にあるディスクのみです。始動時に流入する圧力によってディスクが上昇すると、低温のドレンと空気がディスク下部に内部リングに流れ、出口から排出されます。ドレンの温度が次第に上昇すると、トラップ入口を通る時に蒸気が発生する。このフラッシュ蒸気はドレンよりも容積が大きいため、流速が早くなります。ベルヌーイの定理*1に従い、高速の蒸気によってディスクは弁座に引き寄せられます。
メリット
デメリット
動作範囲全体で動作が可能。
(内部部品交換/調整なしに)
非常に低い差圧では動作が確実ではない。
小型で軽量。
空気障害を発生することがある。*2
高圧や過熱蒸気に使用可能。
排出音が大きいことがある。
ウォーターハンマーや振動による影響を受けづらい。
ディスクの摩耗のおそれがある。
サイズに比べドレン排出量が大きい。
凍結による破損の可能性が少ない。
*1:ベルヌーイの定理:動いている流体においては、全ての点における総圧力は同じである、ということを述べています。その総圧力は流体の静的圧力と動的圧力の合計です。静的圧力は圧力計で測定されたもの、動的圧力は流体の個々の粒子が障害物に衝突して停止させられるときに、それらの粒子が作り出す圧力です。動的圧力は粒子の速度が速くなるほど高くなります。
*2:流入圧力がゆっくりと形成されれば、始動時に大量の空気を排出されるが、急激に圧力が形成されると、高速の空気が蒸気と同様にディスクを閉じてしまい空気障害が発生することがあります。
温調式スチームトラップ 、機械式スチームトラップ については、各ページをご覧ください。
スチームトラップの選定についてはこちら のページで解説しております。
次回は『流量計測 』について解説します。
蒸気に関するWebマガジン No.8
スチームトラップは温調式、機械式、熱力学式の3つに分けられます。
今回はこの中の機械式スチームトラップの動作、メリット/デメリットについて解説します。
◆機械式スチームトラップ
機械式スチームトラップは、蒸気とドレンの密度差を感知することで動作します。
機械式スチームトラップには2種類あります。
-ボールフロート式
-逆バケット式
◆ボールフロート式
ボールフロート式では、ドレンが存在するとボールが上がり、バルブが開いて高密度のドレンを通過させます。古いタイプのボールフロート式では、手動式の空気抜きが行われていたが、現代のトラップでは温調式のエアベントが使用され、初期空気を通過させながら、トラップでドレン排出にも対応することができます。
メリット
デメリット
蒸気温度のドレンを連続排出できる。
凍結による破損の可能性がある。
大小のドレン負荷にも等しく対応することができ、広範囲にわたる急激な圧力や流量変動に影響されない。
多様な圧力範囲で動作させるためには、異なる内部部品が必要となる。高差圧で動作させる場合、オリフィスを小さくしフロートの浮力とのバランスを維持する必要がある。
口径に比べて大容量。
ウォーターハンマーへの耐性が高い。
空気障害解消装置付きが選べる。
◆逆バケット式
逆バケット式は、蒸気がトラップに到達すると、さかさまになったバケットが浮き上がり上昇して、バルブを閉じます。バケットの上部にはベント穴が開いており、これは蒸気と空気を排出させる上で必要不可欠です。
メリット
デメリット
高圧に耐えられる。
バケット最上部の穴径が小さいため、空気を極めて緩慢にしか排出できない。
ウォーターハンマーへの耐性が高い。
凍結による破損の可能性がある。
入口に逆止弁を追加すれば過熱蒸気ラインにも使用可能。
圧力変動が予想されるラインには逆止弁が必要。
故障時には通常開。従って例えばタービンからの排出など、この機能を必要とする用途に置いては安全性の向上となる。
バケット下部に水封が必要。水封が失われると無駄に蒸気が排出されてしまう可能性がある。
スチームトラップの種類、機械式はいかがでしょうか。下記のページで温調式と熱力学式について説明しています。ぜひこちらもご覧ください。
スチームトラップの種類 温調式 (バランスプレッシャー式、バイメタル式)
スチームトラップの種類 熱力学式 (ディスク式など)