用語解説 エンタルピーとは
蒸気に関するWebマガジン No.24
◆エンタルピー
圧力と温度の条件に基づく、水(温水)と蒸気の総エネルギーのことです。熱含量とも呼ばれます。全てのエネルギーの基本的な単位はkJが使用されます。
◆比エンタルピー
単位質量(1kg)当たりのエンタルピー(総エネルギー)です。単位としては通常kJ/kgが用いられます。
◆水のエンタルピー/比エンタルピー(顕熱)
1kgの水が所有しているエンタルピー。沸点に達した飽和温度の温水の場合、『飽和水のエンタルピー』との称します。記号では『h' or hf』(f=fluid)と表します。
大気圧の下で約10℃の温度の水がボイラに給水され、その水は100℃で沸騰し始めるとします。この水1kgを1℃上昇させるためには4.186kJ(1kcal/kg)が必要です。したがってこの水1kgの温度が10℃から100℃まで上昇した場合、
90℃×4.186kJ/kg℃=376.74kJ/kgの比エンタルピー上昇があったことになります。もしこのボイラが10,000kgの質量(10,000リットル)を保有していれば、それを沸騰点まで上げるには次の比エンタルピーが必要です。
376.74kJ/kg×10,000kg=3,767,400kJ/kg
この数字は水の比エンタルピーではなく、単に温度を10℃から100℃まで上げるために必要な比エンタルピーの増加であることを記憶しておかなければいけません。蒸気表の基準点は0℃の水で、これは私たちの目的上、熱量はゼロであると想定されます。(絶対熱量はもし、-273℃の絶対ゼロから測定すれば、明らかに大きい物になります)
従って、100℃の水の比エンタルピーは、
100℃×4.186kJ/kg℃=418.6kJ/kgとなります。
圧力が上がれば沸点も上がるので、その分温水の温度も高くなるため保有エネルギーも増えます。
飽和温度以上にはなりませんが、飽和温度以下の場合もあります。
◆蒸発のエンタルピー/比エンタルピー(潜熱)
1kgの飽和水を蒸気に変えるために、さらに加えた追加のエンタルピー。記号では『h"-h' or hfg』と表します。圧力が低くなればなるほど増加します。
蒸発する際に得た熱(液体から気体へ、温度の変化を伴わずに状態の変化を作り出すエンタルピー)が「蒸発のエンタルピー」と呼ばれます。蒸発のエンタルピーは飽和水のエンタルピーと乾き蒸気のエンタルピーの差に当たります。
◆蒸気のエンタルピー/比エンタルピー(全熱)
1kgの蒸気の総エンタルピーであり『全熱』とも呼ばれます。記号であらわすと『h" or hg』 です。(g=gas)
『水のエンタルピー』+『蒸発のエンタルピー』=『蒸気のエンタルピー』です。
100℃、大気圧での質量1kgの蒸気において、
水の比エンタルピー 419kJ/kg + 蒸発の比エンタルピー 2,257kJ/kg = 2,676kJ/kg
2,676kJ/kgが蒸気の比エンタルピーとなります。これは飽和蒸気表より抜粋した数値です。
下記のグラフは蒸気の圧力と比エンタルピーの関係です。
圧力が上昇しても、相反する熱の和になるので、結果としてなだらかに増加します。
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